欧州委員会は11日、仏防衛エレクトロニクス大手タレスによるオランダのIC(集積回路)カード大手ジェムアルト(Gemalto)の買収計画を、条件付きで承認すると発表した。タレスの汎用ハードウエア・セキュリティーモジュール(HSM)事業の放出を条件としている。
タレスは昨年12月、ジェムアルトを約48億ユーロで買収することで合意。欧州委は今年7月に本格調査を開始した。その結果、汎用HSMの分野では合併後の新会社の市場シェアが大きく拡大し、価格上昇や選択肢の減少、イノベーションの低下が懸念されると判断。HSMは暗号ソフトウエアを用いることで、データ保護に使用される暗号キーの生成、管理、保護を可能にする。
タレスはこれを受け、「nShield」ブランドで展開する汎用HSM事業を売却することを提案。売却先はこの分野に精通し、欧州経済領域(EEA)内で一定の評価を得ている企業を選ぶとしている。なお欧州委は、決済用HSMの分野については競争を阻害する可能性は低いとしている。
タレスはデジタル事業をジェムアルトに統合し、引き続きジェムアルトのブランドを使用する方針。今後はセキュリティーソフトや生体認証(バイオメトリクス)、多要素(マルチファクター)認証、IDカード(身分証明書)の発行などに集中する。売上高は35億ユーロとなり、デジタルセキュリティーでは世界でも3位以内に躍り出る。また、2021年までに1億~1億5,000万ユーロのコスト削減効果を見込んでいる。[M&A][EU規制]
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