英国の鉄道業界団体レール・デリバリー・グループ(RDG)は8日、欧州連合(EU)離脱後の鉄道貨物の税関検査について、国内各地の鉄道貨物ターミナルに税関エリアを設ける案を発表した。今後、政府に対して実施を働きかけていく方針だ。
今回の案では、税関を英仏海峡トンネル付近の1カ所に集中するのではなく分散することで検査による遅延を回避する。同時に、トラック輸送より効率を高めることで、輸入貨物分野における事業機会も狙えるとしている。
RDGによると、英仏海峡トンネル出口付近のドーランズ・ムーア貨物ターミナルには貨物の安全性を検査する施設があり、EU離脱後に税関検査が必要になれば、これを鉄道税関エリア(RCA)に転換できるという。これに加えて、イングランド中部ダベントリー(Daventry)やロンドン東部ダゲナム(Dagenham)などの貨物ターミナルも、RCAとしての利用が可能で、実現すれば自動車メーカーなど製造業者のサプライチェーンへの影響を最小限に抑えるだけでなく、コストも低減できるという。
鉄道貨物ターミナルには、列車検査のため周囲に高いフェンスや監視カメラを設けることが義務付けられており、RCAへの転換も容易だ。ただ、ターミナル事業者に対してRCAに必要な投資を促すには、政府支援は欠かせないという。また、ターミナル事業者が歳入関税庁(HMRC)に税関検査の実施許可を申請できるようにするなど、制度改革も必要になる。
英国の昨年の鉄道輸入貨物量は、船舶から荷揚げされたコンテナの輸送を除くと年間122万トンと、輸入貨物全体の5%に満たない。ただ、RDGによると、英仏海峡トンネルを通って自動車部品やボトル入りミネラルウォーターなどを輸送する貨物列車の数は1日8本に上る。
■政府の計画では税関検査は不要
HMRCはRDGの提案に対して、政府が7月にEU離脱方針の白書で示したように、関税のかからない「モノの自由貿易圏」が創設されればRCAは不要とコメント。ただEUとの交渉の成否に関わらず、貿易の円滑化と租税の正確な徴収に向けて、機能的な税関や付加価値税(VAT)および物品税の制度の策定を進めていると説明した。
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