世界的なメディア王ルパート・マードック氏率いる米21世紀フォックスは11日、英衛星放送大手スカイに対する買収提示額を1株当たり14ポンドに引き上げたと発表した。共に争奪戦を繰り広げている米ケーブルテレビ(CATV)最大手のコムキャストが提案した1株当たり12.5ポンドを上回っている。
21世紀フォックスの新たな案はスカイの企業価値を約245億ポンドと見積もった水準。スカイの独立委員会は既にこれに合意しており、13日にも英政府から承認される見通し。一方、コムキャストについては、13日が提案の最終期限となっており、21世紀フォックスは同社の出方を見守る格好だ。
21世紀フォックスは2016年12月、39.1%を出資するスカイの残り株を1株当たり10.75ポンドで取得することで合意。だが英政府は、マードック氏が英国で既に大衆紙サンと高級紙タイムズを保有することから、メディアの多様性が損なわれる恐れがあるとして英競争・市場局(CMA)に調査を付託していた。CMAは調査の結果、21世紀フォックスがスカイを買収すればメディアの多様性が失われ公共の利益に反するため、是正策としてスカイ・ニュースを米ウォルト・ディズニーかその他の企業に売却する必要があるとの最終判断を示した。
英政府は今年6月、CMAの判断を支持するとした上で、21世紀フォックスとコムキャストによるいずれの買収提案も承認すると発表。ただし、スカイ・ニュースが向こう10年にわたり運営資金を保証されることや、今後も英国を本拠とすること、番組編集の独立性を維持することなどを条件に挙げた。一方、コムキャストによる買収計画については、公共の利益を損なう懸念がないとして無条件で承認した。
なお、コムキャストとディズニーは、21世紀フォックスの資産取得を巡って争っている。21世紀フォックスがスカイの買収に成功した場合、その資産も対象に含まれる見通し。ディズニーは6月、21世紀フォックスの資産に対し713億ドルの買収案を提示。前回の520億ドルから大幅に引き上げている。[M&A]
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