米司法省は29日、独製薬・化学大手バイエルによる米農業化学大手モンサントの買収計画を条件付きで承認すると発表した。バイエルが既に提案していた独化学大手BASFへの90億ドル相当の資産売却を義務付けており、これは米当局が買収承認に当たり企業に求める資産売却の規模として過去最大。取引成立に向けた最後の大きな関門を突破した格好で、向こう2カ月以内に手続きが完了する見通し。
米司法省は、バイエルとモンサントが現時点で競合する事業の売却を承認の条件とした。これらには、バイエルの綿、セイヨウアブラナ、大豆、野菜の種子事業に加え、モンサントの除草剤「ラウンドアップ」と直接競合する「リバティ」の放出が盛り込まれている。資産売却の対象は、欧州委員会が承認した内容と概ね一致するとしているが、同省はバイエルの種子処理事業のほか、一部の知的財産や新製品開発に向けた研究開発(R&D)プロジェクトも手放すよう付け加えた。
欧州委は3月、両社の事業が重複する各分野での資産売却を条件に買収を承認。バイエルはBASFに対して、除草剤事業や種子事業をはじめとするクロップサイエンス部門の一部事業に加え、野菜種子事業や種子処理製品、デジタル農業プラットフォームなど総額76ユーロの資産を売却することで合意している。
なお、独種苗メーカーのKWSザートは先に、バイエルの種子・農薬事業のうち、「Nunhems」ブランドで世界展開する野菜種子事業に対して拘束力のない買収提案をしたと発表。これはBASFが取得することで既に合意しているが、欧州委の承認待ちの状態となっている。BASFはKWSザートの買収提案について直接のコメントを控えつつも、「バイエルの野菜種子事業を取得する拘束力のある合意に調印している」と強調した。
バイエルは2016年9月、モンサントを660億ドルで買収することで合意。実現すれば、種子・農薬市場で世界シェアの4分の1以上を握る巨大企業が誕生する。[M&A][EU規制]
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