アイルランドの製薬大手シャイアー(Shire)は25日、武田薬品工業からの新たな買収提案を受け取り、株主にこれを推奨する方針だと発表した。買収額は約460億ポンドに引き上げられており、5度目の提案で暫定合意にこぎ着けた格好。取引が成立すれば、日本企業による海外企業のM&A(企業の合併・買収)案件としては過去最大となる。
武田は、シャイアー株1株当たり49ポンドを支払うことを新たに提案。現金21.75ポンドと自社の新株27.26ポンド相当を組み合わせたもので、前回の提示額から2ポンド引き上げられた。シャイアーの株主は取引成立後に武田の株式約50%を保有することになる。武田株は東京証券取引所に上場されるほか、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に米国預託証券(ADR)プログラムを上場する予定。
シャイアーは株主への提案受け入れ推奨の条件として、十分なデューデリジェンス(資産の適正評価)が行われることやシャイアーの取締役会において全会一致かつ無条件の承認が得られることなどを挙げている。
シャイアーの取締役会は、英国の買収委員会(テイクオーバー・パネル)の承認を得た上で、両社の協議完了の期限を5月8日午後5時(英国時間)に延長した。この期限は、シャイアーの申請に基づきさらに延長される可能性がある。
今回の取引は、製薬業界におけるM&Aとして、2000年の米ファイザーによる米ワーナー・ランバート買収(1,120億ドル)に次ぐ規模となる見通し。日本企業による海外企業のM&Aとしては、ソフトバンクによる半導体チップ設計の英ARMホールディングスの買収(約240億ポンド)を超え、過去最高となる見込みだ。
武田はシャイアーの買収によって、グローバル市場でのビッグプレイヤーに近づき、ファイザーや米アッヴィ(AbbVie)などとの競争に備えたい考え。シャイアーは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬「ビバンセ(Vyvanse)」(一般名:リスデスクアンフェタミン)を手掛ける神経科学部門と、希少病部門から成る。ただ、2016年に米バイオ医薬品会社バクスアルタ(Baxalta)を320億ドルで買収したことによる負債の拡大や、ジェネリック薬(後発医薬品)との競争激化を背景に最近は苦戦が続く。武田の株主の間では、依然として今回の買収に疑問を抱く声も残っている。[M&A][日本企業の動向]
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