英蘭資本の食品・家庭用品大手ユニリーバは15日、ロンドンと蘭ロッテルダムにそれぞれ本社を置く現体制を改め、本社をロッテルダムに一本化すると発表した。組織構造を簡素化し、機動力を高めるため。英国本社の存続を求めてきたメイ首相にとっては欧州連合(EU)離脱を前に痛手となるが、同社は「ブレグジットは無関係」と説明している。
ユニリーバは1930年に蘭マーガリン・ユニと英リーバ・ブラザーズが合併して誕生。それ以来、88年間にわたり両国に本社を置いてきた。しかし昨年、米食品大手クラフト・ハインツから買収提案を受けたことをきっかけに、経営体制改善の機運が高まり、二重構造の見直しを決めた。企業買収に関するオランダの法律はより保護的で、ユニリーバが同国に本社を置くことで、望まない相手からの買収提案を退けることが容易になるとみられる。
ユニリーバがオランダを新本部に選んだ背景としては、ルッテ首相が打ち出した税制改革も好材料になったとみられる。また同社は、グループ全体の普通株式資本に占めるオランダ法人の割合が55%と高く、株式の流動性が英国法人を上回っていることも理由に挙げている。
ユニリーバは本社の一本化に合せて事業再編を実施し、今後はビューティー&パーソナルケア、ホームケア、フード&リフレッシュメントの3部門体制で運営する。前者2部門は英国に置き、残りをロッテルダムに置く。英国での年間投資額は従来の10億ポンド弱を維持し、人員整理も行わない。なお、ロンドン、アムステルダム、ニューヨークでの上場も継続する。
ポール・ポルマン最高経営責任者(CEO)は「ユニリーバは世界190カ国で展開しており、その大部分がEU域外の国々だ」とし、英国のEU離脱が決定に影響を与えなかったことを強調。英政府の広報担当者は「少数の従業員のオランダ本社への移管は長期的な再編計画の一環」との見方を示し、同社の英国での継続的な貢献と雇用保障を歓迎した。[労務][M&A]
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