欧州委員会は8日、自動車の二酸化炭素(CO2)排出量の2030年に向けた新基準案を公表した。乗用車・小型商用車の新車を対象に、2021年の水準から30%引き下げることを提案している。クリーン・モビリティー包括法案の一環で、ゼロエミッション車(ZEV)や低排出車の生産を促すためのインセンティブ案や、CO2排出基準に違反した自動車メーカーに罰金を科す案も打ち出している。
欧州連合(EU)は、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定に基づき、2030年までにCO2排出量を1990年の水準から少なくとも40%削減する目標を掲げる。自動車のCO2排出量の2030年までの新基準は、この目標の達成に向けたもの。欧州委は早期の投資を促すため、中間基準として2025年までに15%の削減を求めることも提案している。
これに違反した自動車メーカーには、走行距離1キロメートル当たりのCO2排出量が基準値を1グラム上回るごとに、新車1台当たり95ユーロの罰金を科す方針。一方で、ZEVや低排出車が販売台数全体に占める比率が一定の基準を上回った場合には、CO2排出量を相殺できるクレジット制度も導入するとしている。低排出車と見なされるのは走行距離1キロメートル当たりのCO2排出量が50グラム以下の車で、ハイブリッド車(HV)のほとんどは対象外となる。
2030年に向けた乗用車・小型商用車のCO2排出量基準をめぐっては、欧州自動車工業会(ACEA)が20%の引き下げにとどめるよう要望する一方、環境保護団体は40%の削減を求めていた。また、中国や米カリフォルニア州などでは、販売台数に占めるZEVや低排出車の比率の基準を定めているが、欧州委の案はそこまで踏み込むことは避け、クレジット制度を通じて排出量目標と結び付けることにより、これらの比率の向上を促すにとどまった。
クリーン・モビリティー包括法案ではこのほか、公共機関の車両調達におけるZEVや低排出車の比率の基準も設定している。
欧州委のミゲル・アリアス・カニェテ気候変動・エネルギー担当委員は、これらの新基準やインセンティブは欧州がクリーンカーの開発競争で主導権を握るために必要なものと説明。「我々の目標は野心的だがコスト効率に優れ、執行可能なものだ」とした上で、新基準の設定により将来への方向性を示し、クリーンカー開発への投資を促したいと話した。これらの法案は今後、欧州議会および加盟各国の承認を得る必要がある。[EU規制][環境ニュース]
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