オランダの化学大手アクゾノーベルは30日、塗料・塗装事業を米同業アクサルタ(Axalta)・コーティング・システムと統合する方向で「建設的な協議」を進めていると発表した。対等合併となる見通しで、実現すれば時価総額300億ドル超の業界大手が誕生する。これとは別に、特殊化学部門のスピンオフ(分離・上場)も計画通り進める方針だ。
アクゾノーベルは、米同業PPGインダストリーズからの買収案を拒否した上、北米を襲ったハリケーンに伴う原料価格の高騰や船舶向け・保護用塗装部門の不振による業績見通しの下方修正が続き、新たな事業ビジョンを示す必要に迫られている。こうした中、今回の取引は7月に就任したティエリー・ファンランカー新最高経営責任者(CEO)の下で打ち出す最初の一手となる。
アクサルタは1866年の設立。米北東部フィラデルフィアに本拠を置き、高性能塗料や輸送用塗料を強みとする。アクサルタのトラック向け塗料などがアクゾノーベルのポートフォリオを補完するほか、事業統合により約2億5,000万ユーロのコスト節減が見込めるという。
アクゾノーベルは米PPGからの買収案を拒否する一方、今年4月には向こう1年以内に特殊化学部門のスピンオフを行い、これを通じて得た利益の大半を増配や特別配当を通じて、株主に還元することを確約していた。アクサルタとの協議はこの計画に影響を与えず、2018年4月の特殊化学部門の分離に向けて順調に推移しているとした。
アクゾノーベルの現在の時価総額は約226億ユーロ、アクサルタは約81億ユーロ。アクゾノーベルの特殊化学部門の価値は最大100億ユーロとみられており、アクゾノーベルの時価総額は同部門の分離後にアクサルタの水準近くに落ち込む見通し。
アクサルタを保有していた米投資会社カーライル・グループはかつて、アクサルタを上場する前にアクゾノーベルへの売却を検討していた。一部の市場関係者は今回の取引について、PPGの手に渡るのを逃れるアクゾノーベルの意図が明らかで、アクサルタに必要以上の金額を支払う大きなリスクを伴うと指摘している。[M&A][環境ニュース]
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