独総合電機大手シーメンスと仏重電大手アルストムは26日夕、鉄道事業を統合することで覚書(MOU)を締結したと発表した。シーメンスの鉄道部門であるシーメンス・モビリティーがアルストムに統合される形で、シーメンスは新会社の株式50%を取得する。攻勢を強めている同業世界最大手の中国中車(CRRC)に対抗する狙いで、欧州で新たな業界最大手が誕生する。
新合弁会社「シーメンス・アルストム」の最高経営責任者(CEO)には、アルストムのアンリ・プパールラファージュCEOが就任する。計11人で構成される取締役会のうち、6人はシーメンスから送られる。新会社の売上高は153億ユーロ、シナジー効果は事業の統合完了から4年以内に年間4億7,000万ユーロに達する見込み。フランスで上場し、グループの本社はパリに置かれるが、モビリティー・ソリューションズの事業本部はドイツに、車両事業の拠点はフランスに構えるという。なお、シーメンスは統合完了から最短で4年後に、新会社の株式2%を追加取得する権利を取得している。
シーメンスのジョー・ケーザーCEOは「アジアの独占的な企業がグローバル市場のダイナミクスを変え、デジタル化がモビリティーの未来に影響を及ぼしている」とした上で、「今回のフランスとドイツ企業の対等な事業統合はさまざまな意味で力強いメッセージになる」と述べた。
シーメンスとアルストムはそれぞれ、ドイツの高速列車インターシティーエクスプレス(ICE)と仏高速列車TGVの車両を強みとする。シーメンスは22日、アルストムおよびカナダのエンジニアリング大手ボンバルディアとの鉄道事業統合に向け協議中と報じられていたが、最終的にアルストムを選んだ格好だ。
なおフランス政府は先に、雇用が保証される限りシーメンスとの事業統合を支持するとの見解を示していた。ただ同国内では、フランスを代表する企業であるアルストムがドイツ企業の支配下に入ることに反発する声もある。両社は取引をめぐる政治的リスクや国民の反対を避けるため、統合後4年間は両国内の雇用を維持する方針とされる。
今回の取引完了には、欧州委員会による競争法上の承認も必要となるが、ボンバルディアとともに鉄道事業の「世界3強」に名を連ねる両社の統合を巡っては、調査が長期化するとの見方もある。[M&A][EU規制][労務]
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