メルケル首相は4日、国内都市の大気汚染改善に向け設立を予定する基金の規模を5億ユーロから10億ユーロに倍増する方針を示した。都市部でのディーゼル車乗入禁止措置の導入を回避するとともに、9月24日の総選挙に向け、大気汚染対策に積極的な姿勢を示す狙い。
ドイツの政府と地方自治体、自動車産業は8月上旬に開いた全国ディーゼル会議で、国内のディーゼル車530万台を対象にメーカーの費用負担で大気汚染物質の排出量を減らすためのソフトウエア修正を施すことを決定。その際に、持続可能な都市交通の振興に向けた基金を設立することも決め、自動車産業と政府が2億5,000万ユーロずつを拠出する予定となっていた。
同首相はこの日、この問題についての追加協議を行うため、全国の約30人の市長および州首相と会合を持った。その席上で、政府が5億ユーロを追加拠出し、基金の規模を倍増すると発表。また、自動車産業にさらに2億5,000万ユーロの追加拠出を求める可能性も示唆した。
メルケル首相は会合後の記者会見で「エンジンや車の種別による乗り入れ禁止措置は行うべきでなく、出来る限りの努力をするべきとの意見で全会が一致した」と話した。全国ディーゼル会議の2回目の会合は、総選挙後に開催するとしている。
ドイツでは政府の国内自動車大手に対する姿勢が甘く、排ガスによる大気汚染への対策も十分でないとの批判が高まっていた。
■VWへの集団訴訟を支持
メルケル首相は3日出演したテレビ討論会で、企業に対する集団訴訟を可能にする法改正を支持する姿勢を示した。こうした法改正が実現すれば、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は排ガス不正問題をめぐり、国内の問題車両オーナーにも米国で実施したのと同水準の補償を余儀なくされる可能性がある。
米国では1人の原告が起こした訴訟が、同様の状況にある人々の集団訴訟として認められる仕組みがあるが、ドイツでは個々の原告が訴訟を起こす必要があり、多大な訴訟費用の負担を強いられる。メルケル首相率いるキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)と連立を組む社会民主党(SPD)は、これを改善するための改正法案を提示している。
同首相はこの日、SPDのシュルツ党首との対談で、この改正法案を「官僚主義的すぎる」と批判した上で、この問題をめぐる議論に応じる姿勢を示した。ただ政府広報官は、総選挙までに両党の間で意見がまとまるかどうかは不明としている。[環境ニュース]
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