英国の欧州連合(EU)離脱を受け、金融機関各社がEU内に新たな拠点を設けるために必要となる資金は総額300億~500億ドルに上る見通しだ。米コンサルティング会社オリバー・ワイマンが1日、このような試算を明らかにした。
この資金は、ホールセール業務を手掛ける金融機関が欧州に投じている資本の15~30%に相当する。さらに移転後はロンドンと新たな拠点の2カ所となるため、運営費用は業界全体で10億ドル増える可能性がある。これが各行の利益を圧迫し、自己資本利益率(ROE)は2ポイント低下するという。
ブレグジットの交渉が一向に進展しない中で、金融機関は一部業務をフランクフルトなど新たな拠点に移管することを相次いで決めている。オリバー・ワイマンは、英国から異動する人員はホールセール業務で最大1万7,000人、金融業界全体では最大で3万5,000人に上ると予想。ロンドンが欧州向け決済の清算サービスを維持できるかも不透明で、一部の金融機関がブレグジットを機に欧州市場から撤退する可能性もあると指摘している。
■ドイツ銀、ロンドン新本社の入居契約締結
独金融最大手ドイツ銀行は、ロンドン新本社を金融街シティーに建設予定のオフィスビルに移転させるため入居契約を締結した。不動産大手ランド・セキュリティーズが1日明らかにした。ドイツ銀は、ブレグジット後もロンドン重視の姿勢を打ち出した格好だ。
このビルはランド・セキュリティーズが手掛ける再開発地「21ムーアフィールズ」の一部で、2021年に竣工が見込まれている。ドイツ銀は4万3,570平方メートルのオフィススペースを25年間リースで借りる。ただし新築ビルの建設認可が下りることが条件となる。契約金額などは明らかにされていない。[労務]
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