ガソリン・ディーゼル車の販売を2030年までに禁止すれば、国内で60万人が失職する恐れもある――。Ifo経済研究所が18日公表した報告書で、こうした見方を明らかにした。国内経済へのマイナス効果は年間480億ユーロに上る可能性もあるとしている。
ドイツでは、緑の党が9月の総選挙に向け、2030年以降にゼロエミッション車(ZEV)以外の販売を禁止する公約を掲げている。また昨年10月には連邦参議院(上院)が、2030年までにガソリンおよびディーゼル車の販売を禁止するよう欧州連合(EU)に呼びかける決議案を可決するなど、化石燃料車を市場から締め出す議論が盛んになっている。こうした中、Ifoは独自動車工業会(VDA)の委託を受け、2030年までにガソリン車やディーゼル車など内燃エンジン車の新車販売を禁止した場合の影響について調査してきた。
報告書によると、こうした禁止措置の影響を直接、間接に受ける労働者の数は60万人超と、国内製造業の雇用の10%に相当する。このうち、自動車産業が43万6,000人、関連業界の中小企業が最大13万人を占め、いずれも禁止措置により職を失う可能性があるとしている。また、こうした措置を取れば国内の鉱工業生産を13%(金額にして480億ユーロ)引き下げる恐れがあるとみている。
また緑の党は、独自動車産業は内燃エンジン車で成功を収めた結果、代替技術の開発で世界に出遅れたと批判しているが、Ifoはこれについても否定。ドイツは2010~2015年に世界で登録された電気自動車(EV)およびハイブリッド車(HV)関連特許のそれぞれ34%、32%を占めると指摘。「イノベーション努力の不足を理由に内燃エンジン車を禁止することはできない」としている。
VDAのマティアス・ウィスマン会長はこの報告書について、「独自動車産業が従来型エンジンと代替技術の両方で強い技術を持つことを浮き彫りにした」とコメント。最新の内燃エンジンは2030年時点でも不可欠であり、EVとの二者択一ではなく互いを補完し合うものと指摘し、「いずれかを優遇するべきではない」と話した。政府に対しては、政治の役割は達成方法の規定ではなく、目標設定することにあると釘を刺し、市場における選択の自由を確保してほしいと訴えている。[環境ニュース][労務]
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