スイスで5月21日、政府の脱原発政策をめぐる国民投票が行われ、賛成が58.2%で可決された。これにより、原子力発電を廃止し再生可能エネルギーに移行する戦略が進められることになった。
スイス政府は2011年の福島第1原発の事故を受け、原発を段階的に廃止するとともに、電力需要を再生可能エネルギーで賄う「2050年までのエネルギー戦略」を策定。新原発の建設を禁じる一方、既存の5カ所の原発については、老朽化により安全基準を満たさなくなった時点で廃炉とする方針を打ち出した。
同戦略をめぐっては、連邦会議(内閣)を構成する4党のうち、第1党で右派の国民党(SVP)だけが反対し、見直しを要求。同戦略はコストが高くつく上、太陽光および風力発電はスイスの景観に悪影響を及ぼすとして、同戦略の是非を問う国民投票の実施に必要な署名を集めていた。一方、ロイトハルト大統領率いるキリスト教民主党と、第2党の社会民主党、第3党の自由民主党は同戦略を支持していた。
今回の国民投票の投票率は42.3%と平均並みだった。スイスの全26州のうち、同戦略に反対したのは4州にとどまった。
スイスの電力供給は水力発電が中心だが、原子力も約3分の1を占める。「2050年までのエネルギー戦略」は今回、国民のゴーサインを得た形だが、脱原発の具体的な時期はまだ固まっていない。緑の党は2029年までに脱原発を完了する早期実施案を提唱していたが、この案は昨年11月の国民投票で否決されている。アナリストの間では、脱原発の完了時期は既存原発への再投資コストと卸電力価格のバランスにもよるが、2030年以降になるとの見方が強い。[環境ニュース]
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