欧州司法裁判所は14日、企業がイスラム教徒の女性に対して職場でのスカーフ着用を禁じることは、合法となり得るとの判決を下した。ただし社内規定に、目に見える政治的・思想的・宗教的シンボルの職場での着用を禁じることが明示されていること、また、この禁止が特定の宗教や信仰に対する偏見に基づいていないことが要件となる。
今回の判決は、英警備サービス大手G4Sのベルギー子会社で働いていたイスラム教徒の女性が起こした裁判に対して下されたもの。原告は職場でスカーフを着用していたことを理由に解雇されたことは差別を禁じる欧州連合(EU)法に反するとして提訴。この女性はベルギーで第1審、2審ともに敗訴しており、最高裁に当たる破棄院が欧州司法裁に判断を求めていた。
スカーフ着用の禁止は宗教に基づく間接的差別に当たる可能性があるが、欧州司法裁は、雇用主が宗教やイデオロギーの中立性という合法的な方針を全社員に平等に適用する場合、禁止は正当化され得ると判断した。ただし、この場合はキリスト教を連想させる十字架やユダヤ教徒の男性が使用する「キッパ」と呼ばれる帽子などの着用も併せて禁止される格好となる。
一方、欧州司法裁は併せて、顧客からの苦情を理由にスカーフ着用を禁じることは違法との見解を明らかにした。この場合は禁止が主観的な考察に基づくため。これは、仏IT(情報技術)コンサルティング会社マイクロポール(Micropole)でデザインエンジニアとして働いていた女性が起こした訴訟に関するもの。同社は顧客からスカーフへの苦情があったとして、接客時にスカーフを外すよう女性に求めたが、従わなかったことを理由に解雇を通告した。女性はこれを不服としてフランスの裁判所に提訴。その後、欧州司法裁判に判断が委ねられていた。[労務][EU規制]
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