再出版されたヒトラーの著書『わが闘争』が昨年、ドイツのノンフィクション部門のベストセラーとなった。出版元であるミュンヘンの現代史研究所(IfZ)が3日、公表した。
『わが闘争』はヒトラーの半生や反ユダヤ・反共産主義思想がつづられた書籍で、第2次大戦後にバイエルン州政府が著作権を引き継いだが、内容的な問題から出版を禁止していた。ただ、同書の歴史的な意義を踏まえ、原文に注釈などを加え学術書として再出版する計画が浮上。州政府の著作権が2015年末に消滅するのを待ち、IfZが昨年1月に再出版した。
IfZによると、同書の昨年の販売部数は約8万5,000部。学術的内容のため当初の発行部数は4,000部にとどめていたが、図書館や教育機関を中心に注文が殺到し、4月には週刊誌シュピーゲルのノンフィクション部門で1位となった。今月末には第6刷が決まっている。原文が注釈付きで発行されたのは初めて。再販版には解説のほか、約3,700の注釈が加えられており、総ページ数は1,948ページに及ぶ。
同書の再版をめぐっては、ヒトラーやナチス・ドイツの礼賛やネオナチなど極右運動のプロパガンダへの乱用が懸念されていたが、IfZの代表を務めるアンドレアス・ウィルシング教授は「そのような事実は全く見受けられなかった」と断言。反対に、ヒトラーの世界観やプロパガンダの活用に対する討論を通して、全体主義的なイデオロギーが生じた原因やその結果を認知させるのに役立ったと話している。
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