欧州委員会は9日、トルコの欧州連合(EU)加盟努力に関する評価報告書の中で、基本的人権や表現の自由、司法の独立などの面で、同国の取り組みに大幅な後退が見られるとの厳しい評価を示した。加盟交渉の打ち切りにまでは踏み込んでいないものの、その可能性も示唆しており、難民対策をめぐる同国との協力にも暗雲が立ち込めている。
トルコ政府は7月に同国で起きたクーデター未遂以降、事件に関与したとみられる人物を多数逮捕し、企業や公共機関の閉鎖や資産没収を断行している。報告書はこれについて、「透明な手続きを踏むべき」と批判し、司法の独立や公正な裁判が必要と訴えた。また、ジャーナリストが拘束されたりやメディア企業が閉鎖されるなど、表現の自由にも後退が見られることや、死刑制度の復活が検討されていることも問題視している。
欧州委のヨハネス・ハーン欧州近隣政策・拡大交渉担当委員は、「トルコが欧州に近付いていないことは確か」とコメント。「EU加盟候補国に適用される民主主義の高い基準を受け入れるつもりがないなら、その結末に直面することになる」と述べ、交渉打ち切りの可能性を示唆した。これに対し、トルコのエルドアン大統領は「トルコには300万人の難民がとどまっている」とした上で、「加盟交渉を打ち切れば、EUはこれらの難民の行方を懸念することになる」と応酬している。
トルコは1999年にEU加盟候補国となり、2005年に加盟交渉を開始。その後、キプロス問題や不安定な民主主義を背景に交渉が途切れていたが、2013年に再開した。今年3月にはEUと、トルコ経由でギリシャに密航した移民・難民の送還を受け入れることで合意し、見返りとしてEUへのビザなし渡航の実現などを約束されている。[EU規制]
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