英国が欧州連合(EU)離脱により欧州単一市場や金融サービス事業のパスポート制度から除外された場合、英金融業界の損失額は総額380億ポンドに上る可能性がある――。英金融業界団体ザ・シティーUKが6日公表した報告書でこうした見方を明らかにした。
報告書では、EU離脱後も単一市場へのアクセスやパスポート制度を維持した場合、減収幅は年20億ポンド以内にとどまり、年3,000~4,000人の雇用が失われる程度で済むと予想。一方、パスポート制度を失うと共に、対EU貿易を世界貿易機関(WTO)の枠組み内で行うという最悪のシナリオになった場合、関連業界も含めて年320億~380億ポンドの収入と、年6万5,000~7万5,000人の雇用が失われるとみている。
ただBBC電子版によると、ブレグジット支持派の経済学者からは、この報告書は「脅しに過ぎない」との見方も出ている。英金融機関の事業活動の大半はEU域外で行われており、EUの占める比率は年々低下しているという。
金融行為監督機構(FCA)によると、英国で事業免許を取得することにより欧州連合(EU)全域で事業を行えるパスポート制度を利用している国内金融機関の数は約5,500社。米国や日本、スイスの大手銀行のほとんどは、ロンドンを本拠地としてパスポート制度を利用し、EU市場に進出している。こうした企業の間では、EU離脱決定を受け一部事業を英国外に移す動きも出ている。[EU規制][労務]
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