スイスの国民議会(下院、定数200)は22日、移民の受け入れ制限に向け、雇用面で国内の労働者を優遇する法案を賛成多数で可決した。反移民政策を掲げる第1党の国民党(SVP)は受け入れに上限を設ける案を提出していたが、人の移動の自由を定めた欧州連合(EU)との取り決めに反することから、妥協点を模索していた。ロイター通信などが22日伝えた。
スイスでは2014年の国民投票で移民の受け入れ制限を決定。政府はこれを2017年2月までに実行する必要がある。SVPは今回の妥協案に反対票を投じたものの、議員の過半数がEUとの良好な関係維持を優先した。EUのユンケル委員長は先に、妥協案の受け入れには前向きな姿勢を見せており、両者の歩み寄りが前進した格好だ。
今回可決された法案は、新規の求人において、地元民の採用を優遇するもので、スイスで既に職に就いているEU市民も対象に含まれている。また、雇用主は国外からの外国人採用に先立ち、国内の職業紹介所に求人情報を提供することが義務付けられる。
なお、スイスでは今年2月、外国人軽犯罪者の国外退去法案の是非をめぐる国民投票も実施されたが、こちらは否決されている。同案は、スイスに居住する外国人が10年間に軽犯罪を2回犯した場合、自動的に国外退去とするもの。軽犯罪には窃盗やスピード違反、警察官に対する公務執行妨害なども含まれ、例外は認められない厳しい内容となっていた。[EU規制][労務]
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