2021/07/27(火)
第276回 赴任国の社会保障制度
川上さん:みらいさん、こんにちは。弊社の社員がオーストラリアにある現地法人へ弊社に在籍のまま赴任することとなりました。日本の社会保険に加入している場合でも、オーストラリアの社会保障制度へ加入する必要があるのでしょうか?
みらい:まず、日本から海外に赴任される方に対する社会保険の取り扱いからご説明しましょう。日本から海外の現地法人に赴任する場合、赴任先の国の社会保障制度に加入する必要があります。しかし、健康保険や将来の年金受給の観点から、海外赴任中も引き続き日本の社会保険に加入しているケースが多いと思います。そのため、結果的に日本と海外の社会保障制度に二重加入することとなり、保険料も二重で負担しなくてはならないことがあります。また、年金を受給するためには、最低加入期間が定められている国もあり、保険料の掛け捨てといったことがおこります。そこで、こうした問題を解消するため、いくつかの国とは二国間で「社会保障協定」を締結しています。今回赴任されるオーストラリアとの間でもこの協定を結んでいます。
川上さん:「社会保障協定」ですか?具体的にどういった制度なのか教えてください。
みらい:わかりました。社会保障協定を締結している国同士では、原則、就労する国の社会保障制度のみに加入することになるので、例えば、日本の企業から協定相手国の現地法人に赴任した場合は、相手国の社会保障制度のみに加入することになります。ただし、5年を超えない見込みで協定相手国に赴任する場合は、例外規定が適用され、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、相手国の社会保障制度加入が免除されます。オーストラリアとの協定では当初から5年を超えると見込まれる赴任であっても、赴任から5年までは日本の制度にのみ加入し、相手国の制度への加入が免除されます。なお、相手国の社会保障制度加入が免除されるためには、日本の社会保障制度に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を受ける必要がありますので、会社から日本年金機構へ「適用証明書交付申請書」を提出してください。審査の結果、申請が認められた場合には「適用証明書」が交付されます。