2018/04/24(火)
第237回 赴任国の社会保障制度
谷さん:みらいさん、こんにちは。弊社では、社員がオーストラリアにある現地法人へ出向をすることとなりました。日本の社会保険に加入している場合でも、オーストラリアの社会保障制度へ加入する必要があるのでしょうか。
みらい:まず、日本から海外に派遣される者に対する社会保険の取り扱いからご説明しましょう。日本から海外の現地法人に赴任する場合、赴任先の国の社会保障制度に加入する必要があります。しかし、健康保険や将来の年金受給の観点から、海外赴任中も引き続き日本の社会保険に加入しているケースが多いと思います。そのため、結果的に日本と海外の社会保障制度に二重加入することとなり、保険料も二重で負担しなくてはならないことがあります。また、年金を受給するためには、一定の期間社会保障制度に加入していなければならない場合があり、保険料の掛け捨てといったことがおこります。そこで、こうした問題を解消するため、いくつかの国々とは二国間で「社会保障協定」を締結しています。今回赴任されるオーストラリアとの間でもこの協定を結んでいます。
谷さん:「社会保障協定」ですか。具体的にどういった制度なのか教えてください。
みらい:はい、わかりました。社会保障協定を締結している国同士では、原則、就労する国の社会保障制度のみに加入することになるので、たとえば、日本の企業から協定相手国の現地法人に派遣された場合には、相手国の社会保障制度のみに加入することになります。ただし、5年を超えない見込みで協定相手国に派遣される場合には、例外規定が適用され、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、相手国の社会保障制度加入が免除されます。オーストラリアとの協定では当初から5年を超えると見込まれる派遣であっても、派遣から5年までは日本の制度にのみ加入し、相手国の年金制度の加入が免除されます。
なお、相手国の社会保障制度加入が免除されるためには、日本の社会保障制度に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を受ける必要がありますので、会社から日本年金機構へ「適用証明書交付申請書」を提出してください。審査の結果、申請が認められた場合には、「適用証明書」が交付されます。谷さん:もし、当初の予定の5年を超えて出向することになった場合は、どのようになりますか。
みらい:予見できない事情や派遣を中断することによって企業や被用者に重大な困難を及ぼすなどの特別の事情があり、派遣期間を延長する必要があるときは延長申請を行い、両国の合意を得ることができれば、引き続き相手国の社会保障制度加入が免除されます。合意が得られなかった場合には、日本の社会保険の資格は喪失し、相手国の社会保障制度への加入となりますが、「厚生年金特例加入制度」により、任意で日本の厚生年金に加入することもできます。