Gojekの東南アジアにおけるモバイル決済の展開
2020年5月12日
シニアリサーチャー 八幡 茜
✔Gojekは、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムで配車サービスを中心に事業を展開
✔インドネシアで自社の決済サービスGoPayを運営。自己資本で決済事業を展開しているのはインドネシアとフィリピンの2カ国
✔マレーシアとフィリピンで配車サービスの進出を視野。フィリピンではフィンテック子会社を持つが、基盤となる配車サービスの規制がネック
Gojekの主要ビジネス
Gojekは、本拠地インドネシアのほか、2018年にベトナムおよびタイ、2019年にシンガポールへ進出。シンガポールでは、インドネシアと同ブランドのGojek、タイではGET、ベトナムはGoVietのブランド名で配車サービスを展開しています。
Gojekのインドネシアにおけるビジネスモデル
一見、Gojekとシンガポール系Grabのサービスメニューには大きな差はないように捉えられるものの、インドネシアにおいて、両社のビジネスモデルには違いがみられます。Grabがインドネシア市場に注力するにあたり、同国最大手のGojekに追随するため、スキルシェアサービスなど他国にはないメニューを拡充する必要がありました。そこでGrabは、外部企業の提供サービスをプラットフォームに組み込むという戦略をとっています。他方でGojekは、自国企業の強みを活かし、ローカル映画の配信といった独自サービスを、自社グループで内製しています。事業ごとの収益など更なる分析の必要はありますが、ビジネスモデルに差異点があるのは、今後の二社の展開を捉える上で、ひとつのポイントといえるでしょう。
Gojekの決済サービス展開
Gojekはインドネシアにおいて、決済サービスのGoPayを運営しています。競合のGrabは、インドネシアでの決済事業ライセンスの取得が難航し、地場のモバイル決済サービスOVOとの提携に至りました。一方Gojekは、フィンテック企業3社を買収することで、ライセンス取得のための条件を満たしています。
自社グループによる決済事業を展開しているのは現在のところ、インドネシアとフィリピンの2カ国です。フィリピンでは、2019年にフィンテック企業のCoins.phを傘下に収めました。同年、タイではサイアム商業銀行と決済サービスの協業で提携しています。
今後は、マレーシアとフィリピンへの配車サービスの進出を視野に入れており、先にフィンテック企業を子会社に持つフィリピンで、配車サービスを基盤としたデジタル決済の本格参入が考えられます。ただし、フィリピンでは配車事業の規制が厳しく、ライセンス取得が課題となっています。
詳細データは、NNA発行「東南アジアにおけるモバイルペイメントの現状と展望 2020」、「モビリティーサービスのビジネスモデル インドネシア企業調査レポート2020」に収録されています。
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