インドネシアのモバイル決済事情
2019年5月9日
シニアリサーチャー 八幡 茜
インドネシアにおけるモバイル決済のいま
✔15歳以上の人口の約半数が、銀行口座を保有しないアンバンクト(Unbanked)層✔一方で携帯電話の普及率は91%と非常に高い
✔キャッシュレス社会の実現に向けインドネシア政府は、チップベースの電子マネーカードと、携帯電話番号の登録によるサーバーベースの電子マネーを導入
✔2018年、主要事業者がQRコード決済を本格的に開始
2019年はこうなる
✔統一規格のQRコード「リンクアジャ(LinkAja)」が運用開始。ユーザーと加盟店の利便性が向上する✔配車サービス市場でインドネシア最大手のゴジェック(Go-Jek)が、東南アジアに進出しフィンテック事業に注力する方針。インドネシア国外において、新しいモバイル決済ブランドの立ち上げが見込まれる
ユーザー数1億人超の決済アプリが登場
電子マネーが発行可能な認可企業は、2019年1月現在36社あります。インドネシアのモバイル決済サービスにおいて最もユーザー数が多いブランドは、配車サービス大手Go-Jekの「ゴーペイ(Go Pay)」、財閥リッポー・グループ傘下の「オボ(OVO)」、国営通信傘下の「Tキャッシュ(TCash)」です。
なかでもOVOは、2017年にサービスを開始した後発の決済ブランドながら、シンガポール系配車サービス「グラブ(Grab)」と提携し、グループの小売店や電子商取引(EC)業者を中心に加盟店を拡大。ユーザーは2018年12月時点で1億1,500万人を突破したとされ、急成長しています。
インドネシアの電子マネー発行ライセンス認可企業
また、2019年4月には、インドネシアの国営銀行協会(Himbra)と国営通信事業者テレコムニカシ・インドネシア(Telkom)、国営石油プルタミナが共同で提供するQRコード決済サービスLinkAjaの運用が正式に始まりました。
TCashや国営バンク・マンディリの「eキャッシュ(mandiri e-cash)」などが、LinkAjaとして統合されます。QRコードが統一され利便性が向上することによって、引き続きモバイル決済の普及が進む見通しです。
モビリティの整備状況と交通系の決済サービス
フィンテック分野でもGo-Jekの動向に注目
都市鉄道などの公共交通機関が発展途上にあるインドネシアでは、配車サービスがひとつの交通インフラになっています。
インドネシアでの最大手は、二輪の配車サービスから始まったGo-Jekです。同国初のデカコーン企業(企業価値が100億米ドル超の未上場企業)に成長しました。東南アジア各国において存在感のあるGrabは、インドネシアでは二番手としてGo-Jekを追うという状況にあります。
Go-Jekは、タイやフィリピンなど海外事業の展開を進め、主力ビジネスの配車サービスだけではなく、フィンテック事業に注力する方針を示しています。したがって、東南アジアにおける企業買収の可能性を含め、同社グループによる新しい決済ブランドのローンチが見込まれます。
東南アジアにおけるモバイル決済市場は、Go-Jekの動向にも注目です。
詳細データは、NNA発行「東南アジアにおけるモバイルペイメントの現状と展望2019」に収録されています。
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