NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2024, No.107

【台湾】
美意識高いZ世代
KOLから攻めよ

台湾で1990年代中盤以降に生まれた「Z世代」は、消費行動においても新たな価値観を持つ。オンラインサービスを使いこなし、コストパフォーマンスや利便性を追求。体験にお金を使い、交流サイト(SNS)での発信を前提にブランドや見た目の良さも重視する。Z世代に向けたマーケティングではこうした彼らのニーズをつかみ、SNSを通じたアプローチをすることが近道となる。【NNA台湾 菅原真央】

Z世代は消費においてコストパフォーマンスや体験のほか、SNSでの発信を前提とした見た目の良さなどを重視するといわれている=●●市(NNA撮影)

Z世代は消費においてコストパフォーマンスや体験のほか、SNSでの発信を前提とした見た目の良さなどを重視するといわれている=台北(NNA撮影)

台北市にある銀行で働くクレアさんは26歳。新北市にある実家から、毎日1時間ほどかけて通勤する。週末は家にいることが多く、ドラマを見たり、部屋の掃除をしたりして過ごす。

買い物はオンラインが半分、実店舗が半分。コストパフォーマンスを一番重視している。犬を飼っているため、オンラインではペット用品などを買うことが多い。支払いは主にデジタル決済を使う。

最近お金を使ったのは、5日間の日本旅行。航空会社や宿泊予約のサイトを通じて自分で手配した。全部で6万台湾元(約26万5,100円)ほどかかったが、「台湾内での旅行よりやっぱり海外で遊ぶ方が好き」と語る。旅行中はインスタグラムを通じて、日本で行った場所や食べた物の写真を友人たちと共有した。

台湾政府系シンクタンク、資訊工業策進会(資策会)傘下の産業情報研究所(MIC)が2022年に実施したZ世代を対象にした調査では、Z世代が最もよく利用するオンラインサービスの1位は「ショッピング」、2位は「食事の注文」となった。

MICの張筱祺・シニア産業アナリストは「Z世代は生活のさまざまなニーズを満たすためにデジタルツールを使用することに慣れており、他の世代と比べて消費において利便性をより重視する」と説明。フードデリバリーなど、時間を節約して便利に食事をするためなら少し多くお金を払ってもいいと考えているという。また「コロナ後はグルメと旅行がZ世代が最も求める消費行動になる」と見通した。

体験を重視

実際にZ世代を将来的に消費の主力となる層と捉え、取り込みを図っているオンラインショッピングサイトもある。

台湾電子商取引(EC)大手、網路家庭国際資訊(PCホームオンライン、網家)は「Z世代は『購入体験』を重視している」と分析。製品がもたらす体験や個人のイメージの形成、娯楽・レジャーを楽しむことに重点を置いているとみている。

同社はZ世代を意識したサービスとして、22年9月に米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」のサブスクリプションサービスを開始した。月額約1,500~2,300元で最新機種が使用でき、契約期間が過ぎたら新しい機種に変更できるサービスで、第1弾では受け付け開始から30分以内に全商品の注文が埋まったという。

網家は「Z世代にとって、スマホは単なる通信機器ではなく、ブランド信仰やぜいたく品の体験といった意味も含んでいる。製品に耐久性があっても、多くの若者は新たな機種が出ればすぐに替えたいと思っている」と指摘した。

台北市に住む女性、ジェニファーさん(25)は、最近百貨店で高級ブランドの香水を買った。「物欲はあまりないが、買う時は品質を重視する。買い物の機会がそれほど多くないので、より良いものであれば、より多くのお金を払うこともいとわない」と話す。

過去にZ世代に関する調査を実施した天下雑誌の天下学習事業群・内容産品部の呉佩旻氏は「Z世代は美意識が高い」との見方を示す。SNSでの交流に慣れているため、視覚的な要求が高くなっているといい、「買い物は必要のためだけではなく、その人のセンスやスタイルなどを表す意味を持ち、自分がどんな人間であるかを人に理解させる意図もある」と分析した。

訴求はSNS活用を

Z世代に向けたマーケティングでは、SNSの活用が重要となる。

MICの調査では、Z世代の約4割は「テレビをほとんど見ないまたは全く見ない」と答えた一方、8割が「ユーチューブなどのオンライン動画コンテンツを見る」と回答。張氏は「ブランドや広告主は、Z世代向けのオンライン動画広告により多くのリソースを割くべきだ」と強調した。

またZ世代はインスタグラムやユーチューブ、Dcard、TikTok(ティックトック)などのSNSに評価や自分の好みを投稿すると指摘。多くの広告代理店ではクローラー(ウェブ上の文書や画像を定期的に巡回してデータベース化するプログラム)や人工知能(AI)を活用してSNSの声を収集し、Z世代の好みを分析したり、アンケートを実施したりしていると説明した。

天下雑誌傘下で台湾の社会人向け雑誌「Cheers快楽工作人」(22年1月から休刊、現在はウェブメディア)とDcardが21年5月に発表したZ世代(調査時点で26歳以下と定義)に関する調査では、Z世代がよく使うSNSはインスタグラム(87.4%)、ユーチューブ(81.3%)、Dcard(68.5%)――の順となった。

呉氏は「Z世代に向けたマーケティングでは、彼らが認めるKOL(キーオピニオンリーダー、インフルエンサー)を活用することで購入に結び付けることが期待できる」との考えを示した。

(2023年2月17日 NNA台湾版より)

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