NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2024, No.107

【シンガポール】
洋菓子店をリブランド
「手頃で高級」前面に

シュークリーム専門店「ビアードパパ」を運営するDAY TO LIFE(デイトゥライフ、旧麦の穂)(大阪市北区)は、シンガポール法人を通じて買収した現地の洋菓子店「リヴ・ゴーシュ(RIVE GAUCHE)パティスリー」のブランドを刷新した。新店舗をオープンし、新たなメニューを加えて販売品目数を約3倍に増やした。新たに若い世代をターゲットに据える。リブランディング(ブランドの再構築)を機に、今後3年で国内店舗数を約2.5倍の20店以上に拡大する目標の達成に弾みをつけたい考えだ。【NNAシンガポール 清水美雪】

商業施設ネックスに「リヴ・ゴーシュパティスリー」のブランドを刷新した新店舗がオープンした(麦の穂グローバル提供)

商業施設ネックスに「リヴ・ゴーシュパティスリー」のブランドを刷新した新店舗がオープンした(麦の穂グローバル提供)

北東部セラングーンの商業施設「NEX(ネックス)」の地階1階に5月15日、リブランディングをしたリヴ・ゴーシュの新店舗をオープンした。ネックスには過去に出店した後、一度退店していたが、ネックスから再度の出店オファーがあったほか、閉店を惜しむ顧客の声も寄せられていたことから改めて出店した。

新店舗では、主となる材料やフルーツの味が従来の商品以上に伝わるよう改良を施したほか、デコレーションも現代風に仕上げた。シンガポールの暑い気候に配慮して新鮮なイチゴやバジルの香りを楽しめる爽やかなタルトや、みそを使用した珍しいタルトなど複数の新メニューを加えた。既存商品もリニューアルした。

販売品目数は、既存店が約10種類だったが新店舗では約30種類まで増やした。タルトやカップケーキ、クッキー、マカロンのほか、主力のチョコレートケーキ「グアナジャ」を派生させた新シリーズなどを取りそろえた。

リブランド後のコンセプトは「アフォーダブル・ラグジュアリー(手頃な高級さ)」。少しお金を出すだけでおいしいものが食べられるという意味だ。原材料価格の高騰が続いていることを受けて若干値上げしたが、同コンセプトの下、できるだけ手ごろな価格帯に設定した。ウェブサイトも2カ月後をめどに刷新する。

年内に全店舗で再構築

リヴ・ゴーシュは、1993年からシンガポールで日本スタイルのケーキを製造・販売。以前はサッポロホールディングスの外食部門サッポロライオンの現地法人の傘下にあったが、2018年に現地の飲食大手キムリーの傘下企業キムリー・フード・プロダクツが買収していた。

シンガポール法人、麦の穂グローバルは22年11月、キムリーから280万Sドル(約2億8,500万円)でリヴ・ゴーシュを取得。これに伴い、リヴ・ゴーシュのリブランディングを進めていた。リヴ・ゴーシュブランドが23年で誕生30周年を迎えることもあり、外観やロゴも大きく変更した。

麦の穂グローバルの石川享太郎ディレクターはNNAに対し、「リヴ・ゴーシュは長年の顧客に支えられているブランドだ。既存顧客にはさらにおいしい商品、新規顧客には本当においしい商品を知ってもらうため、(リブランドに際して)作業工程や原材料の選定を見直した」と語った。

ターゲット層はこれまで、年齢層が比較的高い人に据えていたが、新たに25~35歳を加えた。30年続くブランドとして顧客の年齢層が上がってきているため、購買力がある若い世代を取り込むことで新規顧客の開拓につなげるのが狙いだ。

9月末までにネックス店以外の国内全7店舗もリブランディングした店舗で展開していく。将来的には国内の店舗数をネックス店を含む現在の9店から3年以内に20店舗以上に拡大する予定だ。

卸売りへの参入も計画

麦の穂グローバルはこれまで、シンガポールで冷凍シュー生地やカスタードの半製品の製造・販売を手がけてきた。リヴ・ゴーシュの買収に伴い、店舗やセントラルキッチン、従業員、設備を取得することで、完成品の製造が可能になった。

今後は洋菓子製造機能を使い、新ブランドを立ち上げることも視野に入れている。リヴ・ゴーシュのセントラルキッチンを活用した新業態への参入も狙う。ビアードパパで焼き菓子商品などのメニューを拡充するといったメリットにも期待している。

石川氏は「23年はリヴ・ゴーシュブランドに注力するが、新業態への参入や卸売りなど次の段階の事業に着手するため計画を立てて進めている」と語った。

(2023年5月17日 NNAシンガポール版より)

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