【韓国】
インフレ時代の味方
コンビニPB大進化
韓国のコンビニエンスストア各社が、低価格商品のプライベートブランド(PB)を相次いで導入している。流通会社と独自に取引契約を結び、供給網を新たに構築してスーパーマーケットより低価格での商品提供を実現した。前年同期比の物価上昇率が6%を超える「超高物価時代」に入り、国民が財布のひもを締める中、新たな企画を積極的に展開することで顧客を取り込みたい考えだ。(NNA韓国 清水岳志)
「CU」は、生鮮食品を安価で提供するPB商品群「シンシンセンセン」の販売を6月に開始(BGFリテール提供)
韓国の消費者物価指数(CPI)の上昇率は、5月に5.4%を記録したのに続き、国際原油高やサプライチェーン(供給・調達網)の停滞などが響き6月には6.0%に達した。これはアジア通貨危機直後の1998年11月以来、23年7カ月の高水準。野菜や肉類などの食材が軒並み値上がりし、国民の懐事情を圧迫し続けている。
新鮮な野菜を安価提供
最大手の「CU」を展開するBGFリテールは、6月に生鮮食品のPBシリーズ「シンシンセンセン」の販売を開始した。ブランド名の「みずみずしい」という意味の韓国語「シンシンハダ」と、「生きがいい」という意味の「センセンハダ」を掛け合わせた造語で、顧客に新鮮な野菜や提供するという意味が込められている。
「シンシンセンセン」の特長は、合理的な価格だ。ニンニクやトウガラシ、レタス、カボチャなど日常の食卓でよく使用する野菜を中心とした商品群は、流通業界の平均価格(100グラム基準)よりも30%ほど安値で提供されている。
BGFリテールは、野菜類の流通を専門に扱う「万仞山農協産地流通センター」との提携により、低価格で商品を提供できる流通経路を構築した。価格は2週間おきに農産物の相場が反映され、農産物価格が下がれば販売価格も下がる方式だ。また、農産物価格が上昇した場合にも、販売価格の値上げ幅に上限を設けることで物価高を抑制できるという。
BGFリテールによると、単身世帯が多い地域やオフィス街の店舗では、2022年5月の野菜の売り上げが前年同月に比べて25.1%、果物は25.3%、それぞれ上昇したという。こうしたニーズや最近の物価高を考慮して誕生した「シンシンセンセン」シリーズを通じ、「今後も食材のラインアップを持続的に拡大していく」(BGFリテール関係者)方針だ。
セブンは肉類を販売
ロッテショッピング傘下のセブンコリアが展開する「セブン―イレブン」は6月30日、低価格を売りにしたPB商品「グッミン(Good People)」を発表した。鶏卵やサムギョプサル(豚バラ肉)、豆もやしなど計5種の商品をまず投入し、ラインアップは徐々に拡大していく計画という。
セブンコリアの関係者は「競争力のあるパートナー会社との契約を通じて良質の商品を比較的安く提供することで、最近の物価高に対応する」と、グッミン導入の狙いについて説明した。
「セブン―イレブン」も肉類を中心とした低価格のPB商品「グッミン」の販売を6月30日から開始した(セブンコリア提供)
中小企業との共存も
GSリテールが運営する「GS25」は、6月から系列のスーパー「GSザ・フレッシュ」で展開されているPB企画の「リアルプライス」を導入した。キッチンタオルや衛生ゴム手袋など日常生活で使用する頻度の高い6種をそろえた。
リアルプライスは、優秀な商品を持っているにもかかわらず販路開拓に苦戦する中小企業を発掘・支援するために17年からGSザ・フレッシュで展開されている企画商品。一般商品に比べて2~3割安い値段が人気となっている。
GS25で販売するリアルプライスの商品は、GSザ・フレッシュで扱う同じ商品よりも量を2倍以上に増やした。BGFリテールの関係者は「物価安定だけでなく、中小企業との共存も図れる。今後は商品群も増やしていく計画」との意気込みを示している。
食品・生活品の伸び顕著
産業通商資源省が7月28日に発表した「2022年上半期の主要流通業の売り上げ動向」によると、コンビニ3社の売上高は前年同期に比べて10.1%増えた。新型コロナウイルス禍の外出制限が解除されたこともあるが、自宅から近い店舗を利用しようとする消費者が増えたことで店舗数が多いコンビニの利用が増えたもよう。特に、「食品」の売り上げは10.6%増、「生活用品」は11.5%増と、全体の伸び率を上回っている。
コンビニ各社は今後も、強みの展開力を生かしつつ、消費者のニーズを反映した企画・イベントを通じてコロナ禍からの回復と高物価への対応に注力する構えだ。
(2022年8月19日 NNA韓国版より)