【マレーシア】
高級品種のドリアン
風味豊かスイーツも
かをり果樹園(横浜市)は、日本でマレーシア産ドリアンの認知度向上を目指す。2017年から同国のヌグリスンビラン州とマラッカ州に持つ自社農園で、高級品種「猫山王(ムサンキング)」を中心としたドリアンの栽培を開始。収穫のめどが立ったことから、日本市場の開拓を本格的に進めていく考えだ。(NNAマレーシア 降旗愛子)
高級ドリアン「猫山王」のアイスクリーム。大手コンビニエンスストアのアドバイザーを務める日本人シェフが監修している(かをり果樹園提供)
かをり果樹園は、ヌグリスンビラン州のクアラピラに32ヘクタール、マラッカ州のカンポンジュスに9.3ヘクタールのドリアン農園を持つ。京都府立大学の板井章浩教授の指導の下、日本の農業技術と現地生産者の管理手法・土壌改良のノウハウを融合させ、高品質ドリアンの栽培に取り組んでいる。マラッカ州の農園には民間では珍しいドリアンの研究所を設け、品種改良や病害防止、生産効率向上などに向けた研究も進める計画だ。
通常、ドリアンは栽培開始から収穫まで最低でも4~5年かかるとされ、現地の自社農園ではようやくつぼみがつき始めたところ。斎藤正明社長は「年内の着果を期待している」と話す。
自社農園での収穫開始を前に、かをり果樹園は日本での市場開拓に動き出した。マレーシアで「ドリアンの女王」と呼ばれる有力輸出業者のアン・テオ氏率いるヘーナン・コーポレーションとタッグを組み、現地の生産者による猫山王の冷凍果実を輸入するほか、日本人シェフの監修によるドリアンのアイスクリームを開発し、自社サイトなどで販売している。
マレーシアでも、チーズケーキやロールケーキ、クレープ、大福など数多くのドリアンスイーツが生み出されているが、斎藤社長は「ドリアンの魅力を伝えられる商品は少ない」と話し、ドリアンの風味をそのまま生かした商品を作りたいと意気込む。これまでにアイスクリームだけでなく、ドリアンを使ったジャムやプリン、焼き菓子なども試作したという。
加工食品の開発とともにドリアンの生果実の輸入にも乗り出しており、4月中旬にはマレーシアから第1弾が日本に届いた。日本では流通量の少なさから生のドリアンを味わう機会はほとんどないため、「新鮮な果実のおいしさも伝えていきたい」(齋藤社長)考えだ。
新たな販売チャンネル開拓も
ドリアンは近年、中国や香港のほか、人口の多くを中華系が占めるシンガポールでの消費が伸びているが、日本ではその独特の香りから広く受け入れられているとはいえない。かをり果樹園の商品の購入層も今のところ、東南アジアでの駐在経験がある日本人や、日本在住の中国人、タイ人、ベトナム人が主だ。新型コロナウイルスの影響もあり、在日中国人コミュニティー向けの宅配が好調だという。
日本人顧客の獲得を目指し、今月下旬からライブコマースの「ONPAMALL(オンパモール)」に進出する。ドリアンのような目新しい商品は、リアルタイムのライブ配信を通じた実演販売の方が、魅力が伝わりやすいとの考えからで、新たな顧客層の開拓に期待している。
マレーシアから空輸されたドリアンを囲む、かをり果樹園の斎藤社長(左から2人目)ら(同社提供)
沖縄での栽培も模索
斎藤社長らは、日本でのドリアン普及を目指し、今年1月に日本ドリアン普及協会を立ち上げた。名誉会長に河野太郎行政改革担当相を迎え、新型コロナの収束を待ってドリアンを使ったレシピコンテストや試食イベントなどを開催する予定。
河野氏は、ソーシャルメディアにたびたびドリアンを味わう姿を投稿するなど、愛好家として知られる。沖縄担当相を兼務する同氏の提案もあり、かをり果樹園は沖縄でのドリアン栽培の可能性も探っている。
石垣島では既に研究目的でドリアンの温室栽培が行われており、気候などの環境面では可能とみられる。ただ、マレーシアから苗を輸入するに当たって同国の種苗法に抵触する可能性があることが課題となっており、農業分野で著名な現地の大学などと提携して解決策を探っていく。
(2021年4月27日 NNAマレーシア版より)