【タイ】
メニューは全てタイ料理
地場企業が介護食を開発
ドリームマイニングは「ソフト・スプーン」ブランドの介護食の生産・販売に乗り出した。メニューは全てタイ料理で輸出も視野に入れる=2020年10月、タイ・バンコク(NNA撮影)
高齢化が進むタイでは、地場企業が高齢者向け商品の開発に乗り出している。各社に共通するのが新規参入という点で、「老後生活の利便性と質の向上」に焦点を当てる。タイは2035年に65歳以上が全人口の21%以上を占める超高齢社会に突入すると見込まれており、各社は高齢者向け商品の需要拡大を見据えて動き出している。【本田香織】
新興企業のドリームマイニングは、かんだり、飲み込んだりすることが困難な高齢者向けの介護食の生産・販売に乗り出した。
高齢者は食に対して保守的な人が多いため、メニューは全てタイ料理なのが特徴。化学調味料や保存料、唐辛子などの刺激物は使用せず、食べやすいようにとろみをつけている。現在は個人宅向けの宅配サービスを試験的に提供。今後、高齢者施設や病院にも提供していく予定という。
同社のサティサ社長は、「新型コロナウイルス感染症の流行前に日本で開催されたシニア向け商品の展示会で介護食の豊富さに驚き、事業を思いついた。タイの高齢者にも『食べる楽しみ』を提供したい」と話す。
タイは東南アジアの食品加工の中心地だが、介護食は一部輸入品が販売されているのみで普及してない。
サティサ氏は「『トムヤムクン(エビのスープ)』や『パッタイ(焼きそば)』『カオニャオマムアン(マンゴーともち米の菓子)』など世界的に知られているタイ料理であれば、海外でも需要があるとみている」と話し、輸出も視野に入れているとした。
タイの国立マヒドン大学の人口社会研究所と、タイ老年学調査開発研究所基金が発表した報告書「タイの高齢者の現状2018」によると、タイの総人口に占める60歳以上の高齢者人口の割合は18年時点で17.6%と、1999年の9.6%の2倍近くに拡大した。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の中では、シンガポール(20.4%)に次ぐ2位となっている。
(2020年11月23日 NNA POWER ASIAタイ版より)