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【アジア業界地図】
航空産業編
中間所得層の増加で需要が飛躍的に拡大
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タイ・バンコクのドンムアン国際空港
経済成長に伴う中間所得層の増加を背景に、航空利用者が飛躍的に伸びているアジア。一方で、格安航空(LCC)の路線拡大によって、フルサービスキャリア(FSC)との利用者争奪戦も激しくなっている。アジア7カ国・地域の主な航空キャリアの搭乗客数と市場の最新動向をまとめた。
中国
南方・東方・国航が1億人超 FSCが市場を席巻
2017年の国内・国際線を合わせた搭乗客数は、中国南方航空、中国東方航空、中国国際航空の3社が1億人超え。世界的にLCCの存在感が高まる中、中国ではFSCが搭乗客数で上位を占める。アジア太平洋航空研究所(CAPA)によると、18年の航空座席数に占めるLCCの割合は、国内線で10%、国際線で14%にとどまった。
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首位の中国南方航空
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出所:各社発表
香港
キャセイが3547万人 3年ぶり黒字転換
最大手キャセイパシフィックと完全子会社キャセイドラゴン航空を合わせた2018年の搭乗客数は3,547万人。18年は約23億HKドル(約332億円)の純利益を計上し、3年ぶりに黒字に転換した。一方、海航集団(HNAグループ)傘下の香港航空は、社債のデフォルト(債務不履行)観測が取り沙汰されるなど、経営不安説が浮上している。
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キャセイパシフィック航空
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※キャセイドラゴン航空はキャセイパシフィック航空の子会社。利用客数は両社の合算のみ公表 出所:各社発表
台湾
中華航空が1450万人で首位 2月にストで混乱も
2018年の搭乗客数は中華航空(チャイナエアライン)が1,450万人、長栄航空(エバー航空)が1,254万人だった。最大手の中華航空では2月、パイロットが過重労働の是正などを求めてストライキを決行。1週間にわたったストで計214便が欠航し、計5万人の旅行客に影響が出た。営業損失はおよそ6億元(約22億円)に上ったとみられる。中華航空と労働組合は向こう3年半はストを決行しないことなどで合意した。
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中華航空イメージ図(同社提供)
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出所:台湾交通部民用航空局
インドネシア
ライオンエアが国内線の首位 国際線は国営ガルーダ
2017年の国内線の搭乗客数はLCCライオン・エアの3,313万人が首位。フラッグキャリアの国営ガルーダ・インドネシア航空が1,960万人、ガルーダ傘下のLCCシティリンク航空が1,223万人で続いた。一方、国際線ではガルーダが483万人で首位。インドネシア・エアアジアが327万人で続いた。国内・国際線の合計で首位だったライオン・エアだが、乗客乗員189人を乗せた機体の墜落事故が昨年10月に発生し、安全上のイメージが大きく損なわれた。
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国内・国内線の合計で首位のライオン・エア
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出所:インドネシア運輸省
タイ
首位は2456万人でタイ航空 LCCが国内線でシェア7割
2017年の国内線と国際線を合わせた搭乗客数は、フラッグキャリアのタイ国際航空が2,456万人で首位。タイ・エアアジアの持ち株会社アジア・アビエーションが1,980万人、ノック・エアラインズが878万人とLCC2社が続いた。LCCが国内線のおよそ7割のシェアを持つまでに成長したタイ。利用者の獲得競争が増していることから、LCC各社は国際線を拡充して収益確保を図っている。
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首位はフラッグキャリアのタイ国際航空
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出所:各社発表
フィリピン
セブパシが1970万人で首位 PALはANAと資本提携
LCCセブ・パシフィック航空とフラッグキャリアのフィリピン航空(PAL)が2強。2017年の搭乗客数はそれぞれ1,970万人、1,450万人だった。ANAホールディングスは今年1月、PALの持ち株会社PALホールディングスの株式9.5%を取得すると発表した。業務・資本提携により、ANAはPALに取締役を派遣。共同運航や空港業務の相互委託の拡大を図ることを明らかにした。
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首位はLCCセブ・パシフィック航空
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出所:各社発表
インド
インディゴが国内線で独走 FSC2社は経営不振
2018年の国内線の搭乗客数は、LCCインディゴが5,763万人で、2位のジェットエアウェイズの3倍に達した。ただし、インディゴを運営するインターグローブ・アビエーションの18年4月〜12月期決算では43億ルピー(約67億円)の純損失を計上。燃料コストの増加と通貨ルピーの下落が影響した。ジェットエアとナショナルフラッグのエアインディアのFSC2社は、ともに経営不振が伝えられており、インドの航空産業では再編の機運が高まっている。
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国内線で首位独走のLCCインディゴ
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出所:インド民間航空管理局(DGCA)
【Close up】
韓国で航空旅客数が過去最高 国内線8年ぶり減も国際線好調
韓国国土交通省によると、同国の2018年の航空旅客数が前年比7.5%増の1億1,753万人で過去最高を更新した。LCCによる増便などが背景にある。
国際線旅客数は8,593万人で11.7%増加した。最も伸びたのは中国路線で15.6%増加。欧州(12.9%)や日本(12.1%)、東南アジア(12.0%)の各路線も2桁の伸び。
一方、国内線旅客は3,160万人で2.5%減少。済州島(2.5%減少)路線などが不調で、8年ぶりのマイナス成長となった。
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韓国フラッグキャリアの大韓航空
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出所:韓国国土交通省