【アジア・ユニークビジネス列伝】
コンビニで住宅販売(韓国)
AIカメラが銃検知(タイ)
それを売るのか、そんなサービスがあるのか。アジアでは思いもよらない商品やサービスに出会う。現地ならではのユニークなビジネスから今回は、韓国の大手コンビニが始めた住宅販売と、危険な銃器を検出可能なタイのAI監視カメラに注目。
<韓国>
コンビニで住宅販売
一戸建てが2カ月で
韓国コンビニエンスストアのEマート24が販売する組み立て式住宅(同社提供)
韓国コンビニエンスストアのEマート24は昨年11月、建設会社のYMK総合建設と手を組み、組み立て式住宅を販売すると発表した。韓国のコンビニで住宅が販売されるのはこれが初めて。
住宅のタイプは、居室2部屋にトイレ、リビング、キッチンなどからなる約50平方メートルの平屋の他、約66平方メートル、約83平方メートルの2階建ての3種類。価格はタイプごとに1億3,000万ウォン(約1,500万円)、1億7,000万ウォン、2億ウォン。
購入者が所有する土地があることが条件で、水道、電気、浄化設備などについては自ら手配して工事を済ませておく必要がある。
Eマート24は同11月末まで、店舗で住宅購入の申請を受け付けた。その後、購入者はオンライン上で展開される3Dモデルハウスを通じて住宅の内外の様子を見ながら、好みに合わせてインテリアや外装などを決定。決済、設計、許認可を経て、約2カ月で希望の場所に建設される。
住宅は壁、屋根、床といった部材を事前に製作し、現地で組み立てる工法を採用。同社によると、建築時間や費用、廃棄物の排出を抑えることができ「環境に配慮した次世代の建築工法として注目されている」という。
Eマート24はこれまでにも、輸入車や電気自動車(EV)、カラオケブース、ゴルフボックスなどを扱い、好評を得ている。提携するYMK総合建設は、顧客接点の増加とともに組み立て住宅商品のPRを図る。
Eマート24の担当者は「住宅への関心が高い中、既存のアパートや住宅の代わりになる新たな工法の住宅商品を展開することになった。今後も多様なニーズに合わせてユニークな商品やサービスを提供していきたい」としている。
<タイ>
AIカメラが銃検知
発砲事件の発生防げ
バンコクの「サイアム・パラゴン」で昨年10月に起きた発砲事件直後の店内の様子。ポップアップストアの柱には銃弾の痕が生々しく残っている(NNA撮影)
人工知能(AI)を使った画像解析を手がけるRUTILEA(ルティリア、京都市)が、AIを搭載した監視カメラで銃器を検出する技術開発を進めている。タイ政府のプロジェクトの一環によるもので、今年4月にも実証実験に入る。
タイは登録制で銃の保有が認められており、その数は700万丁とも、未登録分を含めれば1,000万丁とも言われる。地方では発砲事件がしばしば発生しているが、業務量の多い警官だけで銃犯罪を予防することは困難なのが実情だ。
2022年、東北部ノンブアランプー県の保育所などで元警察官の男が銃を乱射し、37人を殺害。昨年10月には、バンコクのショッピングモール「サイアム・パラゴン」で発砲事件が発生。2人が死亡したのは記憶に新しい。銃器の検出は駐在員と家族の安全にも関わる問題だ。
ルティリアは、昨年8月からタイ国立キングモンクット工科大学(KMUTT)の研究機関である科学技術イノベーション政策研究所(STIPI)と共同で、動画情報から銃器を検出するAI技術の開発を進めている。
同社はAI事業の1つとして、専門的なプログラミング知識がなくてもシステム開発できる「ノーコード」のデザインツールを提供している。元々は、製造業の生産効率を支援するところから事業を出発した。
ルティリアの石川喜堂氏は、銃器の検知には同社のAIを使った「物体検知」と「姿勢推定」の技術が応用できると話す。
KMUTTの担当者と握手するルティリアの矢野貴文代表(同社提供)
物体検知では、AIにさまざまな銃の種類を学習させる。姿勢推定では、タイ警察の協力を得てカバンから銃を取り出したり、銃を構えたりする姿勢をAIに認識させる。姿勢推定は実際の製造現場では、登録した作業姿勢から間違った作業をしていないかを検出するのに役立っている。
石川氏によると、今年4月をめどに保育園や病院といった室内で銃器を検出するための実証実験を始める見通し。実証実験は2段階。最初はAIに学習させたり覚えさせたりする。次に、監視カメラを使ってリルタイムでの検知を目指す。想定期間は3カ月ほど。有効性が確認された場合、個人情報などの法的な問題がクリアになった段階で実用化される見通しだ。
石川氏は「銃犯罪の予防に最善を尽くしたい。首都圏から始め、地方に拡大していければ」と述べた。