【みんなのお土産】
定番「ばらまき用」調査(下)
笑いあり涙ありの体験談
海外との行き来が多いビジネスパーソンに欠かせない「ばらまき用」の土産品。お薦め品などのアンケート結果を見てきた当企画も今回が最後。お土産に関する忘れられない体験談をまとめて紹介する。「あるある!」ときっと共感できるはず。
イラスト:イケウチリリー
- ■調査概要
対象:日本とアジア各地在住のNNAの有料契約者およびアジア関連の仕事などに携わるビジネスパーソン(中国、香港、ベトナム在住者は除く)
期間:2023年10月18~31日
方法:ウェブアンケート
回答者数:146人。在住地は日本18人、台湾10人、韓国9人、タイ31人、ラオス1人、マレーシア13人、シンガポール6人、インドネシア31人、フィリピン7人、インド17人、その他3人
内訳:男性88%、女性12%。年代は20代3%、30代10%、40代24%、50代43%、60代18%、他2%
日本人にウケが悪い
ドリアンとスパイス
まずは、日本の職場や取引先向けに購入したアジア土産の、トホホなエピソード集。
「反応がいまいちだった」という声が目立ったのが、独特な香りの南国果物ドリアンを用いた菓子。果肉を用いたクッキーなどは、東南アジアではメジャーな土産品だが「大不評でほとんど食べてもらえなかった」(タイ在住・以下同、50代男)といった声が多数。
同じく、日本ではなじみのない食材や香辛料を用いた食品は反応が芳しくない。
「中国で買ったソーセージは、八角の味が強くて不評」(日本、40代男)や「現地で人気のギー(バターオイルの一種)のお菓子は日本では全く受け入れらず。マサラの味付けをした綿あめ風の菓子もしばらく放置されていた」(インド、50代男)など。
エリア別の話題で目立ったのがインド在住者からの嘆きの声。
「インド土産というだけで、何となく敬遠される」(インド、30代男)「ただでさえ食べてくれないのに、個装されていないチョコを買っていき、さらに警戒された」(同、40代男)
メジャーなイメージがある月餅も「あまり喜ばれない」「現地のように1個を複数人で分けて食べる習慣がない」などの理由で、日本向けには微妙との声が複数あった。
アジア各地の土産品。鮮やかなパッケージが印象的(NNA撮影)
アジア向け日本土産
「暑さ」にはご注意
次はアジア向けの日本土産。失敗談の代表格は「暑さ」に絡んだもの。
「暑さでチョコレートが溶けた」(タイ、60代男)「常温保存という餅菓子が、インドネシアの気温では溶けてドロドロに」(インドネシア、60代女)など。
「日本で買った土産が現地でも売っていた。値段は高かったが、現地でも買えるのかと思うと価値が下がった気がした」(タイ、50代男)といった、現地でも買えることが分かりがっかりした体験談も複数あった。
日本で購入した和菓子(NNA撮影)
東南アジアで「反応が微妙だった」という声が目立ったのが和菓子。
「ようかんは甘過ぎるようで不人気」(インドネシア、60代男)「和菓子はフィリピン人の口に合わないことも。溶けていたとしてもチョコ系の方がいい」(フィリピン、20代男)など。
土産文化の違いに戸惑ったというエピソードも。
「箸をばらまき用にしようとしたが人気がなかった。ベトナムでは、箸を個人に贈るイメージがない様子だった」(その他、60代男)「タイ人にハンカチを渡したら『お別れですか』と笑われた。ハンカチには涙を拭う意味があると後で知った」(タイ、50代男)など。
定番か脱定番か
それが問題だ!
当企画で「白い恋人」や「ヨックモックのシガール」など定番の日本土産を紹介したが「何度も受け取っているため、反応が冷たい」というコメントがちらほら。
あるいは「定番は面白くないと思い、マニアックな物やより日本的な物を配ったことがあるが、反応が良くなく、結局は定番でいいのかと感じた。悩まなくて楽だけど」(タイ、50代女)「面白いと思い『ねるねるねるね』など知育菓子の詰め合わせを渡したが、気味悪がられて食べてもらえなかった。その一方『じゃがポックル』ばかり持っていったところ飽きられて、次回は煎餅を持ってきてほしいと言われた」(日本、50代男)と、苦労が報われないケースも。
あえて、脱定番にチャレンジする人も。
「ブドウに挑戦したことがあるが、実がポロポロ取れて渡せる状態ではなかった。ケーキも崩れて無理だった」(シンガポール、50代男)
定番も脱定番も難しい!
外で渡す、箱で送る
ベテランたちの工夫
土産のパッキングや渡し方などに工夫を凝らすベテランの技を紹介。
「最近は土産も含めた贈答品を受け取らない顧客が増えており、買ってきた物を渡せないことも。仲のよい方であれば、会社を出て帰りがけに渡すなど工夫している」(マレーシア、40代男)
「シンガポールのSNSなどではやっている物を買っていくと喜ばれる。日本に行く人が増えているので、安易に空港で買った品はさほど喜ばれない」(シンガポール、50代男)
「(フィリピンで人気のカップ麺)シーフードヌードルは、スーツケースの容量を占めてしまうので、箱買いして預け荷物で送ればよいことを何回かの往復で学んだ」(フィリピン、50代男)
「ほとんどの物が現地でも購入可能なので、在留邦人向けには搭乗前に空港のコンビニでおにぎりなどを購入して到着直後に急いで配るのがおすすめ」(インド、50代男)
探すのにもひと苦労
ムスリム&菜食者用
千疋屋総本店「ヴィーガン&グルテンフリークッキー」フルーツクッキーとフロランタン。 各1,080円(同社のプレスリリースより)
選定に苦労している様子が垣間見えたのがインドに多いベジタリアンと、マレーシアやインドネシアなどのイスラム教徒(ムスリム)への土産。
「本格的なベジタリアンはクリームやチーズも駄目なので、成分表をじっくり読む必要がある」(インド、50代男)というケースがある一方で「相手のベジタリアンの度合いが分からず、千疋屋のビーガン(完全菜食主義者)向け菓子を買ったが、その高級感が伝わらなかった。結局、牛乳は問題ないメンバーだったためチョコレートで十分だった」(インド、30代男)という話も。
「インドでのベジタリアンや酒を飲まない人の割合は、体感的に首都圏で5~6割。地方はさらに多い。一方、酒や肉をたしなむグローバルな人もいて、こっそりと依頼されたりする」(インド、20代女)
イスラム教徒の場合、豚肉や豚由来の成分を含む製品がNGなのは言わずもがな、ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)認証のあるなしもポイント。成分には問題がなくても、ハラルマークがないと受け取ってもらえないという証言が多数。
「インターネットで探した日本のハラル(認証あり)の菓子を持っていったらとても喜ばれた。やはり、そうではない物は安心してなかったようだ。これからも頑張って探そうと思った」(インドネシア、50代男)
相手を思い、品物を選ぶ心遣いが一番の土産かもしれない。
「高級で良質な物」求める
プロに聞く土産のトレンド
観光土産品の業界団体として活動する全国観光土産品連盟。1961年から日本商工会議所と共催で「全国推奨観光土産品審査会(NIPPON OMIYAGE AWARD。以下NOA)」を開催し、日本各地の土産文化を盛り上げている。2016年には訪日観光客の増加を受けてグローバル部門も新設した。事務局長の小松靖直さんに、最近の海外への日本土産のトレンドや選び方のポイントなどを聞いた。
「全体としては、団体旅行から個人旅行が主流になったことを受け、個人消費を意識したコンパクトな容量になり、パッケージもおしゃれで目を引くものに変化している」と解説。日本らしさが審査基準の1つとなるNOAグローバル部門では、コロナ禍を経て高級のりや厳選果実を用いたジュースなど、健康的で本物志向の品が増えているという。
日本に来るアジア人は基本的に裕福ということもあり、国産の原材料を生かした製品など、高級で良質な物を土産にも求める傾向があるという。品質の良さや適切なパッケージなど「いい土産品」の目安として、NOAの審査に合格した証しである「推奨品シール」を目印にしてほしいと小松さん。
土産を選ぶ方も、自分の目と舌をよく肥やしていく必要がありそうだ。
2023年度NOAグローバル部門・国土交通大臣賞に選ばれた山本海苔店「一藻百味」。外国人観光客も手軽にのりを味わえる。明太子などの具材を細かくまぶしてある(全国観光土産品連盟提供)
23年度NOAグローバル部門・中国大使館賞の小豆島酒造「小豆島にオリーブの実のなる ころ…」(左)。地元産オリーブから採取した酵母を用いたこだわりの純米酒(全国観光土産品連盟提供)