【NNAセミナー】
変わるタイ・ベトナム
新たな時代と政治経済
NNAはこのほど、東京都内でNNA倶楽部会員限定の無料セミナー「タイとベトナムの政治・経済の現状と見通し」を開催した。8月に新首相が選出され、軍政からの転換や経済への影響が焦点となるタイ。不動産や金融市場の混乱で経済の先行きに不透明感が強まるベトナム。注目される2カ国の状況や今後の見通しについて、赤木攻・大阪外国語大学名誉教授と酒向浩二・阪南大学経済学部教授の2氏が詳しく紹介した。
講義を聞く参加者(NNA撮影)
セミナーは9月21日に実施。2部制で1部は「混迷するタイを解剖する」と題し、赤木氏が講演。今年5月の総選挙後から混迷が続くタイを理解する上で欠かせない政治的な力学とは何なのか、王室や軍部、市民は政治とどう関わってきたのかなどを、歴史をひもときながら解説した。
赤木氏は、経済発展で中所得国化したタイは、かつて軍から市民まで支持を広く集めた故プミポン国王が君臨した時代とは既に異なり、新たな民主化を求める世代や資本家層が台頭していると指摘。「旧体制と、それに挑戦する新体制がせめぎ合う時代に入った」と断じた。その後については「10年ほどをかけ、新たな方向へ向かうだろう」とみる。
2部は、酒向氏が集めた豊富なマクロデータを基に、タイとベトナムの経済状況や短中期の展望などを語った。足元については、タイは自動車部門の生産回復が顕著で「日系企業は確実に稼げる状況」と評価。一方で、ベトナムは購買担当者指数(PMI)の不振が続いていることを引き合いに「基調は総じて弱い」と分析する。
日本企業の戦略についても触れ、「タイは点から面へと考えるといい。東南アジアを面で捉えると、タイに構える拠点の存在感は高まる。ベトナムは中国からの投資が拡大しているが、各国間のバランスを重視する。日本への期待は揺るがない」とアドバイスした。
ウェブで同時配信も
「本業に生かせる」
セミナーはNNA倶楽部の会員限定で無料開催。会場と動画投稿サイト「ユーチューブ」でのライブ配信によるハイブリッド形式で行われ、アジアでのビジネスに関心を持つ企業関係者や研究者など約300人が聴講した。
参加者からは「タイの政治の話が大変参考になった。日本市場が振るわないので東南アジアに期待している」(菓子メーカー幹部、60代男性)、「就航地の経済や政治の状況を知ることができて本業に生かせる」(エアラインのマーケティング担当、30代女性)といった声が聞かれた。