NNAカンパサール

アジア経済を視る September, 2023, No.103

【ビジネスノート】

今熱い、タイのコスメ市場
プチプラと高級品で美しく

タイで化粧品市場の競争が激化している。「プチプラ」と呼ばれる低価格が強みの地場ブランドに、Kポップブームで勢力を増した韓国系、信頼が売りの日本系、洗練された欧州系がしのぎを削る。タイ人消費者はメーキャップでは安さを重視、スキンケアには高くても品質を重視する傾向が強く、日系ドラッグストアではスキンケア用品の販売が伸びている。【NNAタイ 天野友紀子、Pravethida Anomakiti】

女性客でにぎわう、中心地・サイアムにあるコスメ専門店=8月19日、バンコク(NNA撮影)

コロナをきっかけに
セルフケア用品拡大

首都バンコクの中心地にあり、多くの若者が集うサイアム。週末ともなると、商業施設内のコスメ売り場は女性客で大にぎわい。地場、日本、韓国、欧州などさまざまなブランドが並ぶ棚の前で商品を吟味する姿が見られる。

タイ国営クルンタイ銀行のシンクタンク、クルンタイ・コンパスが先ごろ出したリポートによると、タイの化粧品(ヘアケアや香水などパーソナルケア用品含む)市場は、2022年に2,180億バーツ(約9,077億円)に達した。

内訳は◇スキンケア:41%◇ヘアケア:16%◇メーキャップ:12%◇口腔(こうくう)ケア:12%◇バス・シャワー:9%――など。国内生産品が占める割合は85%、海外ブランドの輸入品が15%となっている。

ルースパウダー(粉状のフェースパウダー)で国内シェア1位の地場シーチャン(SRICHAND)のラウィット・ハンウサハ最高経営責任者(CEO)によると、タイのカラー化粧品(アイシャドー、口紅、ファンデーション、チークなど)市場は新型コロナウイルスの流行で一時大きく落ち込んだ。ただ「おうち時間」が増えたことでパック・フェースマスクやヘアケア製品といったセルフケア用品の市場が目に見えて拡大。コロナ収束を受け、カラー化粧品の販売も回復した。

コロナをきっかけに消費者がこれまで使ったことのなかったセルフケア用品を買うようになったほか、若者を中心に美容に気を使う男性も増えている。こういった要素を追い風として、タイの化粧品市場は毎年5%の成長が続くとクルンタイ・コンパスは予測。30年の市場規模は22年比で約1.5倍の3,230億バーツに達する見通しだ。

メークはプチプラ
肌ケアは高級品で

タイの地場ブランド。シーチャン(左)はボーイズラブ(BL)ドラマで人気の男優を起用。MEILINDA(中)、NAREE(右)はガーリッシュなデザインで見せる(各社の公式フェイスブックより)

NNAがバンコク在住の20~30代のタイ人(女性4人、男性1人)に愛用する化粧品ブランドについてアンケートを行ったところ◇地場「MEILINDA」「NAREE」「MERREZ'CA」など◇韓国系「ラネージュ」「エチュード」「イニスフリー」◇日系「セザンヌ」「キャンメイク」◇仏系「ラロッシュポゼ」◇豪系「イソップ」――といったブランドが上がった。

欠かせないアイテムに関する質問では「日焼け止め」「リップ・口紅」「アイブロー(眉ずみ)」を選んだ人がそれぞれ3人以上。スキンケア・メーキャップ商品への支出については月平均300~500バーツが4人、1,000バーツ以上が1人だった。

購入場所はドラッグストアからオンラインまで幅広いが、近年はオンライン購入の割合が増加傾向。事前に「ツイッター」や「ユーチューブ」の美容系インフルエンサーの写真・動画で評価や色味をチェックしてから購入するという。

冒頭で紹介したように、バンコクのドラッグストアや百貨店では地場、日系、韓国系、欧米系ブランドによる競争が激化している。競合ブランドについて前出のラウィット氏は「非常に多い。コスメストアで棚に並んでいる全ブランド(が競合)だ」とコメント。また、全体的なトレンドとしてKポップや韓国ドラマの流行を背景に、韓国の影響力が強い状況が続くとの見方を示した。

一方、スキンケア用品は状況が異なる。「メーキャップは基本的にプチプラを使うが、スキンケアにはお金をかける傾向が強い」と話すのは、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が展開する日本ブランド専門店「ドンドンドンキ」のタイ店舗のコスメ商品担当者。NNAのアンケートに応じたタイ人消費者からも「スキンケアは高いものを買うが、メーキャップは色味などが良ければ安いもので済ませている」との声があった。

ドンドンドンキの担当者は「ブランドを重視する人が多く、スキンケアは高級ブランドの商品の人気が高い」とも話す。同店では資生堂の商品とコーセーの「雪肌精」、カネボウ化粧品の「SUISAI」がよく売れているという。

NNAの調査に応じた、タイ人女性の愛用コスメの一部。メーキャップ(左)は80~300バーツとプチプラ系。一方スキンケア(右)は「クラランス」といった欧米系の高級ブランド品が目立つ=バンコク(NNA撮影)

追い上げる韓国系
信頼で勝負の日系

タイのマツモトキヨシでは、プライベートブランドのスキンケア用品の販売が伸びている(マツキヨココカラ&カンパニー提供)

日本ブランドに対しては品質や機能・効果に対する信頼が厚く、中~高所得層の消費者の間では資生堂の人気が根強い。

資生堂の広報担当者によると、同社は百貨店などのカウンターでカウンセリングを通じて販売するプレステージ(高価格帯)ブランドを主力として、タイの美容業界でトップ3に入っている。「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「ナーズ(NARS)」など、プレステージ8ブランドをタイで展開。百貨店・化粧品専門店131軒に販売カウンターを持ち、高価格帯市場で圧倒的な存在感を保っている。

ドンドンドンキとタイに進出するドラッグストア大手「マツモトキヨシ」「ツルハドラッグ」の3社では、各社のプライベートブランドのスキンケア商品の販売が伸びている。例えばツルハドラッグでは、「くらしリズム」ブランドのクレンジングオイルが人気だという。

6月末時点でタイに23店舗を展開するマツモトキヨシの担当者はNNAに対し「タイにおける日本ブランドは、約10年前のような目新しさはなくなってきているものの、顧客からの信頼性は依然として高い」とコメント。

「タイ市場でも韓国製品は増加している」と分析しつつ、日本ブランドは高機能・高単価の商品だけでなく、低価格で品質のよい商品も次々と発売していることから「引き続き売り上げを伸ばせると考えている」と期待感を示した。

「崩れない」タイコスメ、日本でも注目

ルースパウダーでタイ国内シェア1位のシーチャンは、日本機能性コスメ研究所(JFラボコスメ、大阪市)を総代理店として、2020年6月に日本で「トランスルーセントパウダー」を発売した。

長時間メークが崩れないことやマスクに付かないことを強みに、高温多湿のタイで国民的パウダーとなっている。日本でも発売直後から「落ちにくさ」が評判になり、4.5グラム入りのミニサイズは990円という価格の安さも手伝って、若い世代を中心に人気が広がり続けている。

シーチャンによると現在、日本の2,600店で販売されている。今年中に総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などで取り扱いが増え、販売店舗数が3,000店に達する見通しだ。

シーチャンを含めたタイコスメ10ブランドを日本で販売するJFラボコスメによると、昨年の10ブランドの売上高は、実店舗だけで前年比2倍超へと急拡大。オンラインでの販売は実店舗を上回るペースで伸びているという。同社の広報担当者はタイコスメが日本で受けている要因として◇値段の手軽さ◇機能性の高さ◇パッケージのかわいさ――などを挙げる。

広報担当者は韓国コスメについて「ブランド数が多いこともあり市場が大きく、Kポップアイドルの影響でトレンド感も健在」だが、「値段が上がってプチプラとはいえなくなっている側面もある」と指摘。タイコスメは「日韓と欧米のトレンドがミックスされていて日本人も手を伸ばしやすい」ほか、チークやリップティントなどで1,000円を切るアイテムが多く「新しいジャンルとして市場に食い込んでいける」と期待する。

シーチャンのトランスルーセントパウダー。2015年にパッケージを刷新し、タイの若者の心を一気につかんだ人気の品=8月1日、バンコク(NNA撮影)

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