【アジア・ユニークビジネス列伝】
AIが伐採防ぐ(マレーシア、フィリピン)
初の電子マスク(韓国)
それを売るのか、そんなサービスがあるのか。アジアでは思いもよらない商品やサービスに出会う。現地ならではのユニークなビジネスから今回は、熱帯雨林での違法伐採を防ぐAIを活用した取り組みと、韓国発の電子マスクを紹介。
【マレーシア、フィリピン】
森の音を聞き分ける
AIが防ぐ違法伐採
熱帯雨林のさまざまな音を採取する端末。太陽光パネルを使い発電・蓄電し、24時間稼働する(ファーウェイ提供)
熱帯雨林の生物多様性を保全するため、人工知能(AI)技術を使ってチェーンソーなどの音を識別することで違法伐採を防ぐ取り組みが、世界各地で進められている。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)がAIシステムを開発し、環境保護団体や現地当局と協力して導入。違法伐採を防いだ事例も報告され、成果を上げ始めた。
ファーウェイは2019年に米国の環境保護団体「レインフォレスト・コネクション」と、最先端のテクノロジーを使って熱帯雨林の違法伐採を防ぐ「ネイチャーガーディアン」プロジェクトを開始。現在は世界10カ国で展開し、アジアではマレーシア・ボルネオ島のサラワク州とフィリピン南西部パラワン州の熱帯雨林の一部で実施する。
同プロジェクトでは木のてっぺんに端末を設置し、野生動物の鳴き声などさまざまな音を拾ってクラウドシステムへ自動送信した後、AIが音声データを識別する。チェーンソーの音やトラックなど車両が走行する音を検知した場合は、違法伐採の可能性があるため現地の自然保護官(レンジャー)にアプリ経由で通知が届く仕組みだ。
当初はAIが蚊の音をチェーンソーの音と誤認するケースもあったが、現在は95%の確率でチェーンソーの音を判別できるまで精度が上がったという。
フィリピンの熱帯雨林に端末を取り付ける環境保護団体のスタッフ(ファーウェイ提供)
端末1台で平均7平方キロメートルをカバーでき、サラワク州の森林ではこれまでに2回、違法伐採を防ぐことができたという。AIシステムは約500種類の生物の音を識別でき、希少な野生生物の保護にも役立てている。費用は1台約1,000米ドル(約13万円)。
違法伐採を行うグループが武装しているケースがあり、以前は巡回中の自然保護官が遭遇して身に危険が及ぶこともあった。しかし、導入後は発生場所が特定できるためこうしたリスクが減り、自然保護官の心理的な負担も軽減されたという。
【韓国】
ファンもマイクも内蔵
国内で初の電子マスク
LG電子が発売した電子マスク「LGピュリケアマスク」。重さは123グラムで卵2個分(同社提供)
マスクに空気清浄機を搭載――。新型コロナウイルス感染症対策としてマスクの機能性が求められる中、そんなアイテムを開発したのが韓国の大手電機メーカーLG電子。
「LGピュリケアマスク」は、マスク内側の左右2カ所に高性能フィルターを用いた超小型ファンを設置。内蔵センサーが吸気と呼気の圧力を感知し、マスクに流入する空気量をファンが調節する仕組みだ。試験機関の実験では0.01マイクロメートルの粒子を99.999%除去したという。
色はクリーミーホワイトとオーシャンブラックの2種類(LG電子提供)
2時間充電すれば最大8時間の使用が可能。マイクとスピーカーが内蔵されているため着用時の会話にも困らないのが特長だ。価格は19万9,000ウォン(約2万1,000円)。
これまでに香港や台湾、スペインなど20以上の国・地域で販売。韓国では安全基準の整備が遅れ、2022年末に市場に出た。業界団体である韓国空気清浄協会から、国内初の電子マスク認証を取得。疾病管理庁の防疫指針に対応するマスクとして使用できる。
韓国では屋内でのマスク着用義務が1月30日に解除されたが、これからの季節、花粉症対策などにも活躍しそうだ。