NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2023, No.96

【インフルエンサーinアジア】

ネパール女性と結婚
日本の暮らし楽しむ
ケンイチロウさん、さーちゃん

SNSで多数のフォロワーを持ち、強い影響力を持つインフルエンサーが注目を集める昨今。そんな彼・彼女たちの中から、日本とアジアをつなぐインフルエンサーをご紹介。(編集部 古林由香)

ケンイチロウ(左)、1978年、愛知県生まれ。会社員。さーちゃん(右)、1993年、ネパール・ポカラ市の近郊生まれ。5人きょうだいの三女。2013年にネパールで出会い、遠距離恋愛を経て16年に結婚。現在、愛知県で2人暮らし(本人提供)

ケンイチロウ(左)、1978年、愛知県生まれ。会社員。さーちゃん(右)、1993年、ネパール・ポカラ市の近郊生まれ。5人きょうだいの三女。2013年にネパールで出会い、遠距離恋愛を経て16年に結婚。現在、愛知県で2人暮らし(本人提供)


厚生労働省の人口動態統計(2020年)によると、日本において夫婦どちらかが外国人の婚姻数はこの年だけでも約1万5,000件。ユーチューブでも国際結婚をテーマにした動画は珍しくない。

そんな中、人気を伸ばしているのが「さーちゃんの日常『ヒマラヤの花嫁』― Tamaken kitchen」のチャンネル。登場するのは、ヒマラヤ山脈を望むネパールから嫁いできた働き者で愛らしいさーちゃんと、料理上手なケンイチロウさんの国際カップル。年の差は実に15歳。文化も育った環境も異なる2人が「違い」を受け止め前向きに生活するさまが「応援したくなる」「ネパール文化を知れる」と評判だ。現在、愛知県で暮らす2人にユーチューブを始めたきっかけやネパールへの思いなどを聞いた。

――2人が出会った経緯は?

ケンイチロウ 30代半ばにいったん仕事を辞めて、バックパッカーとして世界一周していた道中、ネパールのポカラ近郊で出会いました。さーちゃんが働く茶屋にトレッキング最中たまたま立ち寄り、僕が一目ぼれしたんです。

さーちゃん 当時、私は20歳の大学生。亡くなった父が建てた茶屋を守るため、勉強しながら働いていました。

ケンイチロウ その後も彼女のことが忘れられず何度も訪ね、しまいには茶屋の下にあるゲストハウスに泊まり込み、2カ月ほど滞在しました。その頃にはもうさーちゃんと結婚したい気持ちを固め、彼女にも伝えました。

さーちゃん 外国人がたくさん来るレストランだったので、私はそれまでにも何人もの人からプロポーズされていました(笑)。でも、それは本当の気持ちではないのは分かっていましたし、ケンイチロウの言葉も信じていませんでした。

ケンイチロウ いずれにせよ結婚のためにお金をためなければと考えて、ひとまず日本に帰国。働いて3年後にネパールへ再び向かいました。

さーちゃん ケンイチロウはその間もフェイスブックなどでプロポーズの言葉を送ってくれました。でも私はどう返事していいか分からなくて。メッセージが届いていないふりをすることもありました(笑)。

ケンイチロウ 満を持してさーちゃんに直接プロポーズしたのですが、なかなかOKしてくれませんでしたね。

さーちゃん 日本という国は知っていましたが、結婚して外国で暮らすのはどんなことなのか想像ができなくて‥‥。

ケンイチロウ 諦めようかと思った時、さーちゃんのお姉さんが相談にのってくれて、最終的にはさーちゃんもプロポーズを承諾。彼女のご家族も了承してくれて結婚できました。

さーちゃん プロポーズを断ろうとすると、ケンイチロウがすごく悲しい顔をするんです。私のせいで泣いてほしくないという気持ちがだんだん大きくなりました。家族も「あなたが幸せならいい」といってくれて結婚を決心しました。一緒になって良かったなと思うのは、自分の仕事が休みの日においしいご飯を作り私の帰りを待ってくれているところ(笑)。優しい夫だと思います。

故郷を離れ、遠い日本で暮らすことになったさーちゃんの心情をモノローグ調でつづった動画。言葉の苦労や家族への思いを明かす。撮影・編集したケンイチロウさんの優しさがあふれる1本(さーちゃんの日常「ヒマラヤの花嫁」― Tamaken kitchenのユーチューブより。以下同)

日本を知るネパール人
ネパール知らぬ日本人

――2020年秋にユーチューブを始めた理由は?

ケンイチロウ コロナ禍でユーチューブを数多く見るようになったのがきっかけです。動画や写真は世界一周していた時に趣味でやっていましたし、「これなら自分でもできる」と。最初は僕の料理動画だったのですが、自分の親くらいしか見てくれなくて(笑)。試しにさーちゃんに出てもらったところ急に再生回数が伸びて、彼女メインのチャンネルにしました。

さーちゃん 恥ずかしくて、自分が出るのは最初はちょっと嫌でした(笑)。

――開設から約2年間でチャンネル登録者数は2万8,000人を超えました。

さーちゃん ユーチューブを始める前から「多くの人にネパールを知ってもらいたい」という気持ちがあったのでうれしいです。ネパール人は日本のことを知っているから、日本人もネパールのことを知っていると思っていましたが実際はすごく少ない。それがずっと残念でした。

――どの動画にも多くのコメントが寄せられていますね。

さーちゃん はい。応援メッセージがたくさんあり、とてもうれしいです。

ケンイチロウ 視聴者の多くがさーちゃんファン。逆に僕に対してはややアンチ(批判)的なコメントもあったりしますが(苦笑)。あまり気にしないようにしています。

――チャンネル登録者の属性は?

ケンイチロウ エリアでいうと99%が日本で、視聴者はほぼ日本人だと思います。男女比は男性7、女性3くらいです。

――使用する撮影機材や編集ソフトは?

ケンイチロウ 撮影はピクセル(米グーグルのスマートフォン)のカメラです。最初は一眼レフカメラを使っていたのですが、古かったためかスマホのほうがキレイですね。編集はFilmora(フィモーラ)というソフトを使用。編集と撮影はおおむね僕が担当です。

――動画制作で心がけていることは?

ケンイチロウ コンスタントに出すこと。そのためにも平日も毎日、会社から帰宅後に作業。気が向いた時に作る感覚だとだんだんやらなくなる自覚があるので、やりたくない時も仕事感覚でやるようにしています。

さーちゃん 私もユーチューブは仕事だと思って頑張っています。

――ユーチューブで得る収入は月どの程度?

ケンイチロウ 月によって違いますが、iPhone(アイフォーン)が1~数台買える場合もあれば買えない場合もあるという感じです。副業として考えたらモチベーションになる金額ですね。

テーマは帰化と永住権。国際結婚した夫婦が頭を悩ますトピックを実体験に基づいてトーク。コメント欄では同じ境遇の人々からの経験談やアドバイスが飛び交った

故郷でもユーチューブ
コメントは翻訳し熟読

――22年夏に夫婦でネパールを訪問し、さーちゃん家族の暮らしぶりなどを動画化。視聴者に好評です。

ケンイチロウ 家族だけではなく、近所の人も頑張って出演してくれてありがたかったです。ポカラにある日本語学校にアポなしで行った時もインタビューを快諾してくれて、オープンな国民性を感じました。

――ちなみに現地のスマートフォン普及状況や通信環境は?

さーちゃん スマホはほとんどの人が持っていると思います。私の家族ではお母さんとおばあちゃんは持っていませんが、妹と弟が使っています。

ケンイチロウ 僕が最初にネパールに行った時は、さーちゃんの茶屋は電話はつながるけれどインターネットはほぼつながらない状況。今はWi―Fi(ワイファイ)も普通に使われていて、ここ5年ぐらいで通信環境が大きく変わった印象です。

――さーちゃんの家族もユーチューブを見ている?

さーちゃん はい。日本語は理解できませんが見ています。視聴者コメントも英語に翻訳して全部読んでくれています。家族との電話で「こんなコメントがあったね」と話すことも(笑)。ネパールと日本は遠いですが、ユーチューブが家族と私をつないでくれている。やっていて良かったなと思います。

――今後の目標は?

ケンイチロウ チャンネル登録者数10万人以上を達成し、ユーチューブから「銀の盾」をもらうこと。できる限り長く続けていくことも目標です。

――ネパール情報を日本向けに発信するユーチューバーは貴重です。さーちゃんの実家から映したヒマラヤ山脈の光景も多くの視聴者を魅了しています。

さーちゃん 私の家は山の上にあり移動も大変だったのですが、きれいな山を見ると疲れが消えて心もリフレッシュできました。住んでいた時は当たり前のように思っていましたが、特別であったことが今は分かります。ネパールの良さを伝える動画をこれからも作っていきたいです。

3年半ぶりの帰省の様子を記録。ネパール国内線の移動の様子や、祖母とのドラマチックな再会など見どころ盛りだくさん。チャンネル内で1番の再生回数を記録。「私自身も大好きな動画」(さーちゃん)

ケンイチロウさん、さーちゃんからNNAカンパサール読者へメッセージ

(NNAのユーチューブより)



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