ビジネス書から語学本まで
アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今号は、中国発動画アプリが成功した理由に迫るビジネス書を紹介。
なぜ、TikTokは世界一になれたのか?
マシュー・ブレナン(著)、露久保由美子(訳)
AIを支える人間臭さ
音楽に合わせて踊る姿などを短い動画にして公開できる「ショート動画」の機能で知られる中国発のアプリ「TikTok(ティックトック)」。個人情報保護に問題があるとして米国で物議を醸す一方で躍進を続け、利用者は月間10億人以上。わずか数年で世界的な動画投稿アプリとなった舞台裏を明かす。
アプリを開発した北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者である張一鳴氏の生い立ちをなぞるところから始まり、ソフトウエア工学の専門知識を生かして裸一貫で会社を設立した経緯や、いかにして巨大IT企業との競争に打ち勝ってユニコーン(企業価値が高い新興企業)となったのかをつづる。
著者は中国を拠点に活動する英国出身のITジャーナリスト。IT用語も登場するが、丁寧な解説と図解でフォローする。
同社が設立された2012年は中国でもスマートフォンがはやり始め、人工知能(AI)が急速な進歩を遂げていた時期。そのタイミングにいち早く乗り、利用者に合ったコンテンツを提案する「レコメンドシステム」を業界最高クラスにすべく競合他社から人材を次々ヘッドハンティング。開発に精力を注いだのが成功要因の1つと著者は分析する。
とはいえ順風満帆だったわけではなく、ティックトックの原型となったアプリもリリース当初は不振。それでも過酷な中国IT市場での生き残りをかけて地道に改良を継続し、ユーザーを社員食堂に招いて悩み事の相談を受けるといった“最先端IT”とはいわば対極的な取り組みも実施。成功は偶然の産物ではないことが、うかがい知れる。
原書は20年に出版され、経営トップの交代や米国市場での混乱などここ1~2年の動きには言及していないが、中国スタートアップの成長物語として刺激を十分もらえる1冊だ。
BOOK LIST
※紹介文は版元から引用(原文ママ)
ふしぎな中国
近藤大介(著)
講談社
990円 電子版あり
「白衛兵」「西朝鮮」「外売騎手」「45度人生」「新能源人」「錦鯉」「凡人」‥‥あなたは、この意味わかりますか? 中国ウォッチャーとして知られる著者が、新語・流行語で現代中国を読み解く。読み始めたらとまならい面白さ!
台湾流通革命
──流通の父・徐重仁に学ぶビジネスのヒント
佐宮圭(著)
筑摩書房
1,056円 電子版あり
ローカライズによる商品開発、ITでの近代化など、物流を戦略的に進め、ついに台湾セブン―イレブンを世界一位にまで成長させた、台湾の流通の父・徐重仁とは?
ソウル おとなの社会見学
大瀬留美子(著)
亜紀書房
1,980円
知られざる地下世界や絶景の屋上スポット、まちなかに点在する磨崖仏や銅像の秘密、渋い喫茶店や活気あふれる外国人タウン‥‥。韓国と出会って25年、ソウルを愛し、路地を隅々まで知り尽くした“まち歩きの達人”が案内する、教科書や旅行ガイドでは教えてくれない、一歩先行くソウルの旅。
ミャンマー現代史
中西嘉宏(著)
岩波書店
946円 電子版あり
2021年におきた軍事クーデター以降、厳しい弾圧が今も続くミャンマー。軍の目的は? アウンサンスーチーはなぜクーデターを防げなかった? 国際社会はなぜ事態を収束させられない? 暴力と分断が連鎖する現代史の困難が集約されたその歩みを構造的に読み解く。
くいしんぼうの南インド生活
しばざきとしえ(漫画)、あーちゃん(原案)
イースト・プレス
1,430円 電子版あり
南インドのマンガロール在住、ジャパニーズカフェを経営しながらインド料理を食べまくる! インドめしコミックエッセイ。ミールス、ビリヤニ、ドサ、ミタイ、などなど食を中心に、住んだからこそわかる独特の文化をたっぷり描きます。