NNAカンパサール

アジア経済を視る August, 2022, No.91

ビジネス書から語学本まで

アジア本NOW

ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今号は、中国共産党の強固さについて末端党員の実態から丹念に説き明かした新書を紹介。


中国共産党 世界最強の組織
1億党員の入党・教育から活動まで

西村晋(著)

知られていなかった「強さ」の理由

党員数は9,671万人(2021年末時点)。その数は毎年増加しており、1億人に迫るいきおいの中国共産党。党中央の情報に偏った日本での伝えられ方を憂い、「中国理解のエアポケットである党の基層組織を解説し、『専制的』といった誤解を解きたい」という志で執筆された。

著者は中国の企業ガバナンスを研究する日本人学者。外務省の非常勤職員などを経て、2012年から9年間、中国内陸の河南農業大学で教員として働いた。「同僚の過半が中国共産党員」という職場環境に身を置き、現地で見聞きしたエピソードをふんだんに盛り込みながら、共産党を組織論の観点から解説する。

まず、好奇心をくすぐるのが「どうすれば党員になれるか」と題した第1章。入党申請ができるのは18歳以上で、ほとんどの職場や学校内にあるという党支部に申請書を提出するのが第一歩。正式な党員になるためには厳格な審査と教育訓練で構成された12のプロセスがあり、途中で不合格となるケースもあるという。勉強への取り組みや職場での態度なども審査対象になる。「党員=エリート」の証明であり、国有企業への就職に有利になるという話も興味深い。

党員の活動内容や詳細な組織図を紹介しながら強調するのは、党がトップダウン一辺倒ではないという点だ。全土に散らばる党員から現場の意見を吸い上げ、ボトムアップを巧みに組み合わせた統治システムと説明。新型コロナ対策として迅速なロックダウンを可能にしたのも、この「一党独裁」プラス「草の根民主主義」の独自システムが機能したと述べる。

中国進出企業の関係者なら気になるであろう企業内党支部については、2章分を割いて解説。情報漏えいといったリスクの有無や、企業と党組織双方の文化融合を目指し勉強会を開催したという韓国のサムスン電子の事例などを挙げ、共存共栄の方法を伝授する。

装画は人気漫画『中国嫁日記』の井上純一氏。キャッチーなカバーだが、内容は中国ビジネスにも役立つ情報が満載だ。

中国共産党 世界最強の組織
1億党員の入党・教育から活動まで

2022年4月25日
西村晋(著)、井上純一(装画)
星海社
1,199円 電子版あり

BOOK LIST

※紹介文は版元から引用(原文ママ)

あなたの知らない、世界の希少言語
世界6大陸、100言語を全力調査!


2022年6月20日
ゾラン・ニコリッチ(著)、藤村奈緒美(訳)
山越康裕、塩原朝子(日本語版監修)
日経ナショナルジオグラフィック
2,750円 電子版あり

いくつもの言語に囲まれる環境で育ち、国境や政治地理の研究をライフワークとしてきたユーゴスラビア(現セルビア)生まれの著者が、世界中からあまり知られていない100以上の言語を集め、「それらが使われている地域の歴史」「話者が置かれている現在の状況」「言語がたどってきた変遷」を紹介する。

フォトリアルCGで見る
世界のSDGsスマートシティ


2022年4月19日
エリン・グリフィス(著)、樋口健二郎(訳)
原書房
4,180円

世界で進行する40以上のスマートシティ構想の全貌を圧巻のヴィジュアルで紹介! 脱炭素都市、自己充足型都市、海面上昇による脅威に対応する1万人収容の持続可能な浮遊都市まで、未来を視覚化した唯一無二の1冊。

民族と文明で読み解く大アジア史


2022年6月22日
宇山卓栄(著)
講談社
1,320円 電⼦版あり

中国・韓国の歴史論争、中国・インドの文明闘争、ギリシアの東方遠征など、さまざまな視点から「大アジア」の歴史と文明を描き出す。「民族」と「文明」でアジア史を読み解くことで、これからも問題となり続ける日中、日韓、中韓、中台の複雑な関係の深層がクリアに見えてくる。

東アジア 最新リスク分析
「新冷戦」下の経済安全保障


2022年6月28日
宮本雄二、伊集院敦、日本経済研究センター(編著)
日本経済新聞出版
3,080円 電子版あり

アジアが抱えるリスクをどのように評価するか、そして、そのリスクを踏まえ、いかにして日本及びアジア経済の安定した発展環境を築くか。本書は、東アジアが直面しているリスクの性格と将来を各分野の第一人者が解説する、包括的なリスクガイドです。

韓国の大統領はなぜ逮捕されるのか
北朝鮮対南工作の深い闇


2022年6月24日
西岡力(著)
草思社
1,980円 電子版あり

韓国の新大統領尹錫悦は左傾化した社会を正常化できるか。朴槿恵が親北の文在寅に逮捕されたように二人の暗闘がこれから始まる。韓国の危機の構図を描いた力作評論。

現代モンゴルの牧畜経済
なぜ遊牧は持続しているのか


2022年3月31日
辛嶋博善(著)
明石書店
4,400円

本書はモンゴル国の牧畜社会を対象に、文化人類学的視点からその動態を調査、分析した。牧畜が遅れた生業と認識され、定住化は牧畜の衰退と受け取られていることに疑問を挙げ、堅実なフィールドワークと調査データに基づき牧畜の持続の答えの一つを提示した。

移民時代の異国飯


2022年4月26日
山谷剛史(著)、小林銅蟲(装画)
星海社
990円 電子版あり

今や世界4位の移民大国となった日本の、知る人ぞ知る最新の絶品グルメ——それが「異国飯」。世界各国から日本に移住した外国人が、彼らの故郷の料理を日本各地で作っているのです。(中略)おいしいお店の探し方からオススメ料理、歴史や文化の背景までガイドしました。

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