NNAカンパサール

アジア経済を視る July, 2022, No.90

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ

アジア各国・地域の拠点から届いたNNA記者のコラムを紹介。タイからはナイトエンターテインメント営業再開にまつわるエピソード。インドからはエアコン修理中の「悲劇」など計11本をピックアップ。

記録的な猛暑に見舞われたインド。家庭用エアコンの販売台数が昨年に比べ大幅に伸びている=6月15日、ニューデリー(NNA撮影)

記録的な猛暑に見舞われたインド。家庭用エアコンの販売台数が昨年に比べ大幅に伸びている=6月15日、ニューデリー(NNA撮影)

中国

「もしかしてアイドルを目指していたの?」。人生で初めて髪を染めると伝えると、美容師に冗談っぽくこう言われた。美容師いわく、日本の黒髪ロング=アイドルという印象が強いらしい。その美容師はいつも無口だったので、突然の冗談に少し驚いた。

この日はとても冗舌で、日本で修行した話などを語ってくれた。どうやらロックダウンが明け、2カ月ぶりに仕事を再開した反動らしい。常連客が来店してくれて、うれしいと照れながら教えてくれた。会話が弾んだ一方で、市内の美容室や商業施設などでクラスターの発生が続いていることを心配していた。換気や人数制限を徹底しているものの、客足が遠のいてしまうのではないかと不安になっているという。

通って2年目になる美容院。担当美容師と雑談する仲になれたのはうれしいが、その心うちを知ると少し切なくなった。(東)


香港

アイドル文化が盛んな香港で、最近とある人物が話題になっている。新界地区・セン湾という庶民的なエリアの街市(公設市場)に、何人もの主婦が行列を作る。彼女たちの目当ては、精肉店のイケメン店員だ。

マスク越しではあるものの、確かに目鼻立ちはくっきりしているようで、髪形もアイドル風に整えている。街市で働くほかの男性に比べるとずばぬけて好感度が高く、「イケメンすぎる街市店員」とうわさが広がった。写真を撮ろうとわざわざ遠くから来る主婦が続出し、SNSでファンクラブもできた。ついにはユーチューブチャネルも開設してしまった。

実はこの現象、街市の経営権を握っているとある大集団のPR手法なのではないか、との説もある。真相はまだわからないが、本当だとすれば実に興味深いし、女性たちの目の保養にもなるのでしばらく見守りたい。(伊)


台湾

「面倒くさい」「頑張れ」「お疲れさま」。先日、久しぶりに英語で取材する機会があり、表現に困った言葉だ。中国語であれば、「麻煩」「加油」「辛苦了」とほぼ同じ意味で端的に表現できるが、英語でこのニュアンスを表そうとすると長い表現になったり、汎用性があってしっくりくる単語がなかったりする。

台湾ではビジネスシーンでもLINEが浸透していることもあり、連絡のやりとりも非常にシンプルだと感じる。日本のビジネスメールの感覚であいさつや用件を長々と書いて送っても、「可以(OK)」「了解」の一言で返ってくることもある。

ポジティブな表現が多い英語もいいが、主語がなくてもなんとなく通じてしまう中国語の気楽さにすっかり慣れてしまった。こうして、数年前に分厚い教科書で必死に勉強したはずの正しい中国語の文法をどんどん忘れていくのだった。(妹)


韓国

年を重ねるごとに古いものが好きになる。最近は週末になると、ソウル市内の伝統家屋が並ぶ地域を散策したり、美術館や博物館を訪ねたりするのが楽しい。

ソウル市立工芸博物館では、伝統工芸品の「ポジャギ」を鑑賞した。日本でいう風呂敷だが、韓国らしいカラフルなパッチワーク調の「チョガッポ」は見ていて飽きない。麻の薄い素材の透け感や品のある色合いの重なりには、日常の中のそこはかとない美を感じる。昔は、韓服の着古しや作る際の端切れを縫い合わせて作ったのだとか。つまり、無駄を残さないという先人の知恵でもあるわけだ。

ポジャギを用いた動詞としては、包むのほかに、持つ、背負う、覆う、敷くなど多彩。西洋のカバンが普及する前は、1枚の布が日常のあらゆる場面を包んでいた。自分には可能な動詞がいくつあるかと考えつつ、帰途に就いた。(葉)


タイ

新型コロナ感染予防のため、タイの名物の一つであるナイトエンターテインメントの営業が禁止されていた。バーやパブのネオンは消え、「シャッター通り」と化した当時の歓楽街を支配していたのはネズミ。人の気配がほとんどなくなった歓楽街に、人を恐れる様子もなくネズミが群がっているのを見て戦りつを覚えた。

あれから2年余り。6月からようやくバーやパブなどの営業が解禁された。まだ明るさの残る時間帯に訪れてみると、いくつかの店が開店前の準備していた。久しぶりの営業に店員らの笑顔も見える。一方で、営業再開のめどが立たず、空き家のまま放置されている店も目立った。

今回はネズミの姿はなく、代わりに猫が目についた。ネズミが増えたことで猫が増えたのか、あるいは人が戻ってきたことで猫が増えたのか‥‥。「福を招く」という猫が街の復興の吉兆であってほしいものだ。(須)


ベトナム

周辺にはカフェもなければ、カラオケもない一見退屈な村。ところがそこには、ホーチミンなどではめったに目にしないような広大な家が点在していた。最近、夏の小旅行で中南部ビンディン省を訪れ、ビーチで有名な観光地クイニョンの郊外まで足を延ばしたときのこと。どの家も裕福な暮らしを送っているのが一目瞭然だった。

秘密は食用のアナツバメの巣だ。どの家も鳥の鳴き声を模した音を一日中スピーカーで流し、「金の卵」をもたらす女神をおびき寄せていた。この村は一大産地だという。贈答用にも重宝されるアナツバメの巣は、高い物だと100グラム当たり350万ドン(約1万9,180円)で取引される。漁業を生業にする住民にとって、貴重な副収入源だ。

将来は海辺の町でこんな暮らしもいいなと思い、帰り道にタクシーの運転手に尋ねると、即座に首を振られた。すでに投機で地価が高騰し、庶民には中古の家も高根の花らしい。(蘭)


インドネシア

日常生活に欠かせない洗剤やボディーソープなどの詰め替えサービスがインドネシアでも行われているようだ。一度買ったプラスチック容器などを有効に活用でき、環境問題にも配慮したサービスだ。

詰め替えサービスの業者はバイクでやってきて、住宅街を回る。録音した音声を流して巡回するので、近くに来たことが分かる。取り扱う商品は食器用洗剤から、ハンドソープ、柔軟剤など豊富で、食用油もある。洗剤などは正規代理店から仕入れている。いつも使っているメーカーのものを使用できるので安心だ。

「容器代がかからない分、手軽な価格で利用できる」とサービスを利用する友人は話す。コロナ禍で行動が制限されていたときも、外出せずに買い物できて役立ったと気に入っているようだ。営業地域はまだ限られているが、エコで便利なこのサービス、一度使ってみたい。(エ)


シンガポール

米ディズニーとピクサーによるアニメ映画『ライトイヤー(邦題:バズ・ライトイヤー)』が当地でも公開されることが決まった。ただし16歳未満の観覧は禁止である。

同映画は女性同士のカップルが登場することで、中東やアジアの国を中心に物議を醸している。ロイター通信によると、マレーシアやインドネシアを含む少なくとも14カ国で上映禁止となるほか、最大市場の中国でも上映されないとの見方が有力だ。

当地の市中では同性カップルらしき人を見かけることがよくあり、知人にも同性愛者を公言している人がいる。ただ法律上、こうした人々を保護する制度はなく、男性間性交渉に至っては禁じられている。最近では少しずつ政府の態度も変化しており、性的少数者の保護に向けた動きがある。制限付きではあるが、ライトイヤーの上映決定も変化の一端だと感じる。(薩)


マレーシア

誰かと会う前には、必ず自分自身を“poke”するようにしているんだ――。会う約束をしていたマレーシア人の友人からこのようなメッセージが届いた。“Poke”とは「突く、つっつく」という意味だが、すぐに新型コロナウイルスの検査(スワブ検査)を指していると分かった。

要するに、お互い検査をして陰性であることを確かめてから会おうとの提案だ。友人はこちらの気分を害さないように、あえて遠まわしな言い方をしたのだろう。友人いわく、以前複数で集まった後、そのうちの1人が陽性であることが判明。結果として残りの人たちは陰性だったが、自主隔離する事態になったという。

国内では新型コロナの感染が落ち着きつつあり、人と会う機会も増えている。コロナ後のニューノーマル(新常態)では、身だしなみに加え、事前の検査もマナーとして定着するかもしれない。(香)


フィリピン

雨期入りして暑さが少し和らいで以降、運動不足の解消を目的に極力歩くようにしている。マカティ市の中央商業地区(CBD)を中心に散策しているが、歩行者にとっては困難な環境だと改めて実感する。

各主要道路が平行、または垂直に走っていないこともあり、目的地まで大回りになる上、横断歩道では歩行者用信号がなかなか青にならない。青になっても、すぐに赤に変わるため小走りする必要がある。横断歩道がなく、地下道を通ることを強いられるケースも多い。

買い物などに出掛ける週末には歩行距離が伸び、階段の上り下りや横断歩道でのダッシュを合わせると、かなりの疲労感を覚える。5キロメートルほど歩いた場合、携帯電話のアプリには消費カロリーが300キロカロリー余りと表示されるが、それ以上の体力を使っているのは間違いなく、運動不足解消という意味では効果的なのかもしれない。(中)


インド

猛暑だった5月上旬、リビングのエアコンが壊れた。風は出るが、冷たくない。天井扇を回して数週間過ごしたものの、結局は体調を崩した。

復調後、観念して修理業者に来てもらった。業者の男性2人組はエアコン本体をチェックし、次は室外機があるベランダに。しかし、室外機は高い位置にあり、手が届かなかった。すると、ベランダにあったウッドテーブルに目をやった。一番のお気に入り家具だ。あろうことか、その上に室内の椅子を乗せ、さらにその椅子に男性一人がまたがり、室外機の点検や清掃を始めた。

一連の作業を終え、エアコンから涼しい風が出るようになった。ウッドテーブルは椅子の跡やひび割れが複数広がり、ビンテージ風に様変わり。男性2人は帰り際、満面の笑みで作業完了をアピール。こちらも笑顔で「サンキュー」と応じるしかなかった。(鈴)

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