【インフルエンサーinアジア】
子育てしながら動画にトライ
台湾のよさを“日本感覚”で
インリンさん
SNSで多数のフォロワーを持ち、強い影響力を持つインフルエンサーが注目を集める昨今。そんな彼・彼女たちの中から、日本とアジアをつなぐインフルエンサーをご紹介。(編集部 古林由香)
1976年、台湾台北市生まれ。10歳で家族と共に日本移住。95年、「インリン・オブ・ジョイトイ」の芸名でグラビアアイドルとしてデビューし、女優、歌手、プロレスなど幅広い分野で活躍。2008年、日本人男性と結婚し、10年に男児、13年に女児と男児の双子を出産。16年、台湾の事務所に移籍し芸名を「インリン」に。現在、台北市在住(本人提供)
Blog :インリン オフィシャルブログ 3万7,265 人
Instagram:Yinling(yinling_official) 9,403人
※22年6月20日現在
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、「インリン・オブ・ジョイトイ」としてグラビア界を席巻した台湾出身のタレント、インリンさん。日本人男性との結婚を経て10年に生まれ故郷の台北市に戻り、子ども3人を育てながらタレント活動を続けている。19年にはユーチューブで「インリンちゃんねる」を開始し、日台両方の文化を知るインリンさんならではの台湾情報を配信。変わらぬチャーミングな姿でもファンを喜ばせている。
――ユーチューブを始めたきっかけは?
インリン 以前から、台湾へ遊びにきた日本の友達を観光案内すると、ガイドブックに載っているようなところではなく、「インリンが本当に好きな場所に連れていってほしい」と言われることが多くて。穴場的なところが好きなんだなと気づいたことが1つ。あと、日本語でつづったブログは長年やっているのですが、自分の日本語力をもっと生かさなければという使命感のようなものもきっかけになりました。
とは言えもともと機械が苦手で、動画編集なども無理だろうなと興味があってもなかなか踏み出せずにいたんです。でも、試しにやってみたら意外と気軽にできて。それで本腰を入れて始めることにしました。
――チャンネルのコンセプトは?
インリン 日本人向けの、台湾の観光や文化の紹介です。私は日本に長く住んでいたので、日本の方が興味ありそうなもの、逆にないものが感覚的に分かるので、それを生かした動画を目指しています。
――チャンネル登録者の属性は?
インリン エリアでいうと日本が7割強で、台湾が約2割、残りはアメリカなど。基本的に私のコメントもテロップも全て日本語なので、日本語が分かる方しかご覧になっていないと思います。性別は男性7、女性3ですが、ダイエットや美容系の動画をアップすると女性の視聴者が増えますね。
――制作の人員は?
インリン 企画と編集はほぼ私1人です。所属事務所のマネジャーがたまにカットなど簡単な作業を手伝ってくれることもありますが、それ以外の、テロップや効果音などを入れたりする作業は全て自分でやっています。
撮影も、マネジャーが協力してくれたり、家族旅行などでは夫が撮ってくれることもありますが、半分ほどは自分自身で頑張っています。
――使用機材は?
インリン 米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)11プロ」です。ユーチューブを始めた時からずっとこの1台で撮影も編集もやっています。周囲からは新しいカメラを薦められますが、使い慣れたものでないと続かない気がして。スマホ用の編集アプリInShot(インショット)も、だいぶ苦労して習得したので、新しいアプリとなるとまた時間がかかりそうなので使い続けています(笑)。
台北市の自宅での様子を、モーニングルーティン(朝の習慣)のテーマで紹介。台湾で人気の家電、大同電鍋を使った子ども用の弁当作りなど、当地ならではの生活がうかがえる。「自分はせっかちなので子どもに対しては『早く、早く』が口ぐせ。優しいお母さんではないかもしれません(笑)」(インリンちゃんねるのユーチューブより。以下同)
グラビア系動画もアップ
筋トレが娘のお気に入り
――現在、週1回のペースで動画をアップしていますが、制作時間はどの程度?
インリン 内容にもよりますが、飲食店の紹介であれば撮影自体は結構あっという間で、30分程度で終わります。時間がかかるのが編集。子育てや家事の合間にちょこちょこと1日2時間ほど作業し、3日間くらいかかります。スマホでの編集は、隙間時間にできるのがメリットですね。
――動画制作で心掛けていることは?
インリン 台湾と日本、どちらの方が見ても気分を害さない表現にすることを大事にしています。食べ物一つとっても、台湾人にとってはおいしいけれど、日本の方にはそうでもないものってあるじゃないですか。そういったものを紹介するときに、台湾人の気持ちに寄り添いつつも、いかに日本人の感覚で伝えられるかというバランスを意識していますね。
――これまで160本以上の動画を制作しましたが、特に思い入れがあるものは?
インリン 昨年の夏、3回に分けて配信したダイエット企画です。新型コロナのため外出自粛していたところ、5キロも太り過去最高の体重に。「目標は2週間でマイナス5キロ」と動画で宣言して本気のダイエットにチャレンジし、経過と結果を動画で報告したのですが「痩せなかったら笑われる」と結構プレッシャーでした(笑)。
――肌の露出度が高めの動画もありますが、家族の反応は?
インリン 夫はアップした動画を見ていないようです。だから特に止められることもないですね(笑)。子どもは動画をどこまで見ているか分からないのですが、筋トレ好きの8歳の長女が、私がプランク(エクササイズの一種)をしている動画をスマホで見ながらまねていました。「結構疲れるね」って感想を言われました(笑)。
――ユーチューバーとしてのやりがいを感じる時、逆に苦労を感じる時は?
インリン これまで知られていなかった台湾の文化や歴史を伝えることができ、見てくれた方から「いい情報を得られた」「いつか行ってみたい」といったコメントを頂けると、やって良かったと心から思います。
苦労しているのは、時間がかかる編集作業。企画のネタも、やっていくうちにどんどんなくなっていくので、絞り出すのに苦労することも。急に「あ、これだ」とひらめくこともあるのですが、なかなか大変ですね。
3回に分けて配信したダイエット密着企画の結末編。2週間という短期間で4キロの減量に成功。糖質制限メニューやエクササイズの他、健康的に痩せるため、食事にパパイアを取り入れるなど台湾ならではの知恵も紹介
私がやりたいことの「塊」
それがユーチューブの魅力
――台湾は今年3月下旬から新型コロナ感染者が急増しましたが、ユーチューブ制作への影響は?
インリン 飲食店での撮影は、お店や他のお客さんに迷惑がかかりますし、私自身も不安なので、感染拡大以降はなるべく控えるようにしています。
その代わりではないですが、視聴者は時事ネタも知りたいだろうなと思い、新型コロナの台湾での最新状況を伝える動画を数本制作しました。政府の会見を毎日チェックしたり、いろいろと調べたりしながら作っています。もともとニュースが好きでよく見ていましたが、より責任感を持って情報収集するようになりましたね。
――テレビにはないユーチューブならではの魅力は?
インリン やりたいことを、自分主体でやれる点。テレビの場合、私はあくまでタレントで、企画の趣旨に沿うことや台本通りに進めることが求められますが、ユーチューブは何を映すかも、何を話すかも全てが自由。私がやりたいことの「塊」で、自由に発信できるのが魅力ですね。
――ユーチューバー活動を通じて改めて感じた台湾の良さは?
インリン 例えばお店を紹介する場合、撮影したいとお願いするとどこも歓迎してくれて「これもお薦め」「日本人に紹介するならこれ」といろいろサービスしてくれて。台湾人の優しさや、おおらかな魅力を改めて感じます。
生活自体も全体的にのんびりしていて、ストレスが少ない生活を送れるのがいいですね。私はもともとせっかちな性格で、子どもが3人もいるとのんびりとできない場面も正直多々ありますが(笑)。いい意味での「ゆるさ」、背伸びする必要がなく自分自身のペースで生きられる台湾の良さにつながっていると感じます。
――今後の目標は?
インリン チャンネル登録者数の10万人達成です。ここ半年ほど8万人で止まっていて、自分自身に迷いも生じたのですが、先日9万人を超えたのでこの調子で伸びてほしいです。
日本の芸能のお仕事は、新型コロナの影響でここ数年は渡航できずなかなか難しかったのですが、本格的に再開したいですね。テレビでの食レポ? まだまだなので視聴者に突っ込まれないか心配(笑)。でも、台湾料理の紹介など、私だからこそできる仕事をどんどんやっていきたいですね。
台湾での新型コロナの感染状況をリポート。台北市の繁華街である中山駅前と、台北市最大の夜市として知られる士林夜市を訪れ、市民の感染対策などを紹介。コメント欄には「現状がよく分かる」「早く台湾に行きたい」といった書き込みが多数寄せられた
(NNAのユーチューブより)
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エリカ・エビサワ・クスワンさん(インドネシア/日本)