【アジア・ユニークビジネス列伝】
再生水ビールが復活(シンガポール)
酒専門コンビニ登場(韓国)
それを売るのか、そんなサービスがあるのか。アジアでは思いもよらない商品やサービスに出会う。現地ならではのユニークなビジネスから今回は、シンガポールの水道庁が何と下水処理水を用いて製造するその名も「再生水ビール」と、韓国の大手が仕掛けた高級品満載の「酒専門コンビニ」を紹介する。
【シンガポール】
再生水ビールが復活
好評に応え一般販売
小売店などで販売予定のニューブリュー3缶(PUB提供)
シンガポールの水道庁に当たるPUBは4月8日、ニューウオーター(再生水、NEWater)を使ったクラフトビール「ニューブリュー(NEWBrew)」を再度製造したと発表した。今回初めて小売店などでの一般販売も行う。
再生水は、水自給率向上を目指すシンガポール政府が2002年から開発。翌年、最初のプラントが稼働した。下水処理水を精密ろ過膜や逆浸透膜、紫外線殺菌で処理した高度処理水で、天然水と混合して工場や一般家庭に給水。世界保健機関(WHO)の飲料水水質基準も満たす。
ニューブリューは、PUBとシンガポールの老舗ビール製造会社ブリュワークズ(Brewerkz)が共同で製造。今年のニューブリューは柑橘系の香りを楽しめるブロンドエール。ドイツ産大麦麦芽、シトラホップとカリプソホップ、ノルウェー産クヴェイク酵母を使用した。
18年開催のSIWWで「再生水を利用したビール醸造は世界初」として振る舞い、好評を得た。復活を望む声に応え20年にクラフトビールを製造・小売りする予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期されていた。(20年2月、SIWWの公式ホームページより)
4月に開催した水関連の大型国際会議・展示会「シンガポール国際水週間(SIWW)」で提供したほか、スーパーマーケットのNTUCフェアプライス、コールドストレージ、電子商取引(EC)サイト、ブリュワークズが運営する飲食店などで限定販売している。
3缶入りパックで、価格は1缶4.5Sドル(約410円)。一般販売の期間は4月12日から7月末まで。
SIWWのライアン・ユエン・マネジングディレクターは、「ニューブリューを通じ、再生水はビールの原料に使われるほど安全かつ高品質であることを発信できる」とコメント。ブリュワークズのタン・ウィーハン最高経営責任者(CEO)も、「再生水は、持続可能性とおいしさを両立できると証明した」と自信を見せた。
【韓国】
酒専門コンビニ
高級品で攻める
4月に開業した1号店(Eマート24提供)
韓国コンビニエンスストアのEマート24が、ソウル市江東区に新業態となる酒類専門コンビニ1号店をオープンした。
新店舗は、酒類とおつまみ類が売り場の3分の1を占め、ワインやウイスキー、クラフトビールなど約700種類をそろえる。一般的なコンビニで販売される安価なものから、1本60万ウォン(約6万2,000円)相当の高級ワインやウイスキー、1~2万ウォンのプレミアムビールや伝統酒など、通常の酒販店では扱いが少ない商品もある。
「シーバスリーガル25年」「ダルモアキングアレクサンダー3世」「ロイヤルサルート21年」など高級ウイスキーと共に、一般のコンビニでは扱わない10~30万ウォン台のワインを用意。「最近はワインだけでなくウイスキー、高級ビール、自家製マッコリなどを求める顧客が増えており、それらの品ぞろえを強化した」(同社)という。
ワインソムリエの資格・専門知識を持つ店長が品質管理と接客を行い、顧客に最適の商品を推薦する。店舗に備え付けたスマート通信機器を通じ、リアルタイムの温度・湿度情報を提供。顧客が管理状態を確認できる。サービス面の充実で差別化し、ターゲット層である高客単価の愛好家を満足させる戦略だ。
同社のキム・ジウン一般食品チーム長は「世代、性別を問わずさまざまなお酒を体験したいという顧客が増えている。酒類の需要が高い商圏を中心に出店を拡大していく」と展望を語った。