ビジネス書から語学本まで
アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今号は、家計を切り口に中国社会に迫ったノンフィクションを紹介。
家計簿からみる中国 今ほんとうの姿
青樹明子(著)
「消費は労働の活力」で経済回す
著者は中国の社会情勢に精通したノンフィクション作家。「お金の使い方」をテーマに、庶民から芸能界のスターまでの懐事情を取り上げ、現代中国の実態を浮き彫りにする。
本書のキーとなっているのが、賃金の上昇とともに増え続けている中間層の存在。約3億人いるといわれており、その中でも大都市に住む25~40歳の若い世代は「新中間層」と呼ばれ、消費に意欲的なのが特徴。「消費こそ労働の活力」とばかり、イヌ、ネコなどには高級ペットフードを与え、応援するアイドルには民間機を特別塗装した誕生日広告をプレゼント。次々と紹介される景気がいいエピソードは、ある種の爽快感さえ抱かせる。
売り手もたくましい。新型コロナ禍でも盛況なライブコマース(配信型のインターネット通販)の実例を挙げ、どんな状況でも金もうけに注目する中国人の前向きな姿勢を紹介する。著者が「中国力」と表したそれは、経済成長をけん引する要素の1つかもしれないと膝を打ちたくなる。
急騰する教育費や、重い不動産ローンに追われる「住宅奴隷」の存在など、成長の陰で生まれたひずみも丹念に解説されている。生活そのものが競争という中国社会に疲れた若者が、物欲を捨てて静かに生きることを表明した「寝そべり族」誕生の話も興味深い。
「お金の使い方には、人の性格、人生観、ひいては国家観、地域性も出てくるから面白い」と著者の言葉に共感。中国への関心が高まる一冊だ。
BOOK LIST
※紹介文は版元から引用(原文ママ)
現代アジアをつかむ
社会・経済・政治・文化 35のイシュー
佐藤史郎、 石坂晋哉(編)
明石書店
2,970円 電子版あり
この一冊で鷲(わし)づかみ。気になる章からつまみ読み。社会・経済・政治・文化の最新論点がわかる格好の入門書。熱量があふれ多様性に満ちた広大なアジアを丸ごとカバーした、魅力満載の35章512ページ。アジアのいまをのぞき見て、よく考えるために。
わかりあえる経営力
=異文化マネジメントを学ぶ- 2022年5月12日
上田和勇、小林守、田畠真弓、池部亮(編著)
同文舘出版
2,750円
企業の海外進出にあたって、その国の異文化にいかに適応するかが成功の鍵となる。中国、台湾、ベトナムを中心に、異文化マネジメントの実態とリスク、実務への知見を明らかにする。
読むだけで世界地図が頭に入る本
世界212の国と地域が2時間でわかる- 2022年4月
井田仁康(編著)
ダイヤモンド社
1,980円 電子版あり
世界212の国と地域の“今”をこの1冊に凝縮!一度読んだら忘れない!パラパラ読むだけで位置関係がスッと入る。国とエリアの特徴が面白いほどわかる。経済、エネルギー、人口、紛争、敵対国、同盟国、環境問題——複雑な世界の重要問題がスッキリわかる!
13歳からの地政学
カイゾクとの地球儀航海- 2022年2月25日
田中孝幸(著)
東洋経済新報社
1,650円 電子版あり
子どもも大人も知っておきたい世界のしくみ! 「地政学」がわかれば、歴史問題の本質/ニュースの裏側/国同士のかけひき‥‥が見えてくる! 高校生・中学生の兄妹と年齢不詳の男「カイゾク」との会話を通じて、「地政学」が楽しくわかりやすく学べる一冊。
海の東南アジア史
──港市・女性・外来者- 2022年5月9日
弘末雅士(著)
筑摩書房
968円 電子版あり
ヨーロッパ、中国、日本などから人々が来訪し、交易や植民地支配を行った東南アジア海域。女性や華人などを通して東西世界がつながった、その近現代史を紹介。
巨大中国とユーラシア新時代の国際関係
- 2022年3月
児玉昌己、伊佐淳(編)
芦書房
2,530円
ユーラシアにおける国際協力・交流の歴史と課題から21世紀に向けた望まれる地域発展の在り方について論究する。また中国の台頭や欧米及び日本の政治経済、安全保障などの観点からユーラシア新時代の国際関係を多面的に探る。
ミャンマー 「民主化」を問い直す
ポピュリズムを越えて- 2022年5月26日
山口健介 (著)
NHK出版
1,650円 電子版あり
民政移管後、激動の情勢下で民主派と活動を共にし経済開発に携わってきた若手研究者が、日本で「聖人視」されてきたアウンサンスーチーのポピュリズム化を描き、クーデターと民主化の深層にある権力構造を暴いて、多民族国家の平和と「国民統合」による民主主義の実現への道筋を示す!