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アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、韓国研究で知られる著者が韓国と日韓関係の30年について、自身の半生を通じた自叙伝形式で振り返る。
韓国 国際関係 自伝
韓国愛憎
激変する隣国と私の30年
木村幹 著
「上から⽬線」続ける危険性
戦後最悪といわれる関係性が続く日韓両国。その背景には何があるのか、そもそも韓国とはどのような国なのか。このような疑問を解くヒントが本書で見つかるかもしれない。
著者は、比較政治学と朝鮮半島地域研究が専門の木村幹・神戸大学大学院教授。自身の半生を振り返りながら、学生、研究者として関わってきた韓国社会と、日韓関係の30年について自叙伝形式でつづる。
「研究しやすそうという極めて安易な理由」で韓国を研究対象に選んだのが1980年代末。当時は「最も成功している発展途上国の一つという認識だった」と振り返るが、この30年は韓国経済の成長期。町では英語の看板が増え、どこでもWi―Fiがつながるようになり、豊かな先進国となっていく様子が、少なくとも50回は韓国を訪れたという著者の目を通じて詳細に再現される。
日韓関係を論じた章では、国際社会での両国の立ち位置をさまざまな角度から解説する他、韓流ブームと嫌韓現象に翻弄(ほんろう)された自身の体験を通じ、題名のように一筋縄ではいかない両国の関係性を憂う。
避けては通れない歴史認識問題については、歴史学の重鎮と共に参加した「日韓歴史共同研究」や、歴史教科書のプロジェクトを軸に言及。両国の学者が激しく対立する舞台裏が生々しく描かれており、深く難しい問題であることを改めて認識する。
著者が繰り返し訴えるのは「この30年で韓国、そして日韓関係をとりまく状況が大きく変わった」という現実。韓国の1人当たり国内総生産(GDP)は、すでに日本を上回る。その現実を理解せず、かつての日本人のように「上から目線」で居続けることの危険性を本書は教えてくれる。
5年ぶりとなる保守系政権の誕生を控え、新しい日韓関係に不安と期待がない交ぜのいま、もう一度過去を見つめ、未来を考えるに最適な一冊だ。
『韓国愛憎
激変する隣国と私の30年』
- 木村幹 著 中央公論新社
- 2022年1月25日発行 税込み946円
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※書籍の紹介文は各出版社の宣伝文から引用(原文ママ)
記載の情報は印刷版のもの
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