NNAカンパサール

アジア経済を視る March, 2022, No.86

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─北京冬季五輪編─

新型コロナウイルスが猛威を振るう中、開催された北京冬季五輪。昨年の東京五輪をはるかに上回る厳格な防疫措置に、参加者らから批判の声が上がる一方、競技では数々の感動が生まれ、観る者の胸を熱くした。アジア各地の記者から届いた、北京冬季五輪にまつわるコラムを紹介。

北京の国家体育場(通称「鳥の巣」)で行われた北京冬季五輪の閉幕式。各国の選手団が会場を行進した=2022年2月20日、中国・北京(新華社)

北京の国家体育場(通称「鳥の巣」)で行われた北京冬季五輪の閉幕式。各国の選手団が会場を行進した=2022年2月20日、中国・北京(新華社)

中国

「自動車、鉄道、航空機。乗り物の国産化に並々ならぬ情熱をささげる近年の中国。そんなモビリティーに関する強い自国愛は産業界を飛び越え、スポーツ界にも広がっている。

2月20日まで開かれていた北京冬季五輪。北京市延慶区の競技会場では、真っ赤な箱型のそりが猛スピードで滑っていた。そりのボディーには「中国一汽」「中国航天」の文字。氷上のコースをいかに早く滑るかを競うそり競技「ボブスレー」で、中国チームは今大会初めて国産のそりを使用した。ただ結果は女子1人乗りの6位が最高と、メダルには届かなかった。

思えば、中国は何をやっても最初はいまいち。国産車も最初は安かろう悪かろうの典型とされた。だが、その性能は徐々に向上し、電気自動車(EV)に関しては今や世界を席巻する勢い。赤いそりは果たして国産自動車と同じ道を歩むのか。その答えの一端は4年後のミラノで。(陳)


香港

北京冬季五輪が始まった。ウインタースポーツに縁遠い香港では、メダルラッシュに沸いた半年前の東京五輪ほどの関心は持たれていない。だが今回の五輪は、香港にとっても大きな意味を持つ可能性がある。

香港ではこの週末、コロナ感染者が連日300人を超え、過去最高を大きく上回った。瀬戸際に追い込まれた「ゼロコロナ」政策を維持するのであれば、水際対策や行動制限をさらに強化しなければならないが、そうすれば景気と市民の生活に痛烈な打撃となることは目に見えている。

そもそも香港がゼロコロナにこだわっているのは、中国本土との関係による部分が大きい。感染を抑制することが重要なのは言うまでもないが、一方で香港の経済と社会活動を守るためどこまでリスクを許容できるか。厳戒の五輪後に生じるかもしれない北京の変化に注目したい。(港)


韓国

中国で開催中の北京冬季五輪で、韓国勢は序盤のショートトラックで失格が相次ぎやや苦戦している。同競技は韓国のお家芸だけに、メダル獲得数は前回の平昌冬季五輪よりも少なくなるのではないかと韓国国民はひやひやだ。

その一方で、メダル争い以外で躍進する韓国人選手もいる。注目の的になっているのは、フィギュアスケート男子の車俊煥(チャ・ジュンファン)選手だ。日本勢が銀と銅に輝く中、車選手は5位にランクイン。目標のトップ10入りよりも良い結果に、演技後は満足そうな笑みも浮かべていた。

実は車選手、もともとは子役俳優だったそうだ。試合後、ネイバーなどのポータルサイトでは、子役時代の写真や動画が多く共有された。「アイドルよりもかっこいい」というコメントも多い。

そんな車選手はまだ20歳。4年後の五輪にも期待がかかる。(岳)


シンガポール

北京冬季五輪が開幕した。夏季五輪ほど自身の関心は高くないが、開会式をテレビで観戦した。選手団の入場行進を見ていると、初出場となるサウジアラビアやハイチを含めて冬のスポーツとは縁がなさそうな国からも参加していることに少なからず驚いた。

シンガポールは前回の平昌冬季五輪には選手を派遣していたが、今回はゼロ人だった。気になって不参加の国・地域をインターネットで検索すると、アフリカを中心に、やはり雪とは無縁なところが多かった。東南アジアからは、タイ、マレーシア、フィリピン、東ティモールのみの参加にとどまっている。海外や室内スキー場などで練習できるとはいえ、降雪のない国・地域にとって冬季五輪に参加するハードルはまだまだ高いようだ。

幸いにも当地のテレビ局がインターネットで北京冬季五輪の特別チャンネルを複数無料で開設している。主要な競技はこれで視聴できそうだ。(利)


オーストラリア

北京冬季五輪のスピードスケート・ショートトラック男子1,000メートル。オーストラリアのブレンダン・コーリー選手は、2月7日の準々決勝の最終ラップで3位につけていたが、最終コーナーで2位と1位の選手に接触。3人は転倒し、残った選手が漁夫の利を得た。

どこかで見たようなシーンだ。そう、20年前の2002年の米ソルトレーク冬季五輪。同じショートトラック男子1,000メートル決勝で先行する4人の選手が次々と転倒し、オーストラリアに冬季五輪初の金メダルをもたらしたスティーブン・ブラッドバリー選手の姿だ。

だが、今回は真逆のパターン。いわば、逆ブラッドバリーだ。民放セブンにコメンテーターとして登場したブラッドバリー氏は「(勝った)トルコの選手は、ブラッドバリーしたね」と指摘。ご本人が自分の名前を「動詞」として使うのを初めて見た。(城一)

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