【インフルエンサーinアジア】
インドネシアの自宅でJ-POP
日本に恋するキュートな歌姫
レイニッチさん
SNSで多数のフォロワーを持ち、強い影響力を持つインフルエンサーが注目を集める昨今。そんな彼・彼女たちの中から、日本とアジアをつなぐインフルエンサーをご紹介。(取材=NNA東京編集部 古林由香)
1992年インドネシア生まれ。スマトラ島中部のリアウ州在住。専門学校の講師を経て、2015年にユーチューブチャンネルを開設し、カバーソングの動画投稿を開始。20年10月リリースのシングル『Say So -Japanese version- tofubeats Remix』で日本デビュー(本人提供)
TikTok: Rainych Ran(rainych_official) 22万7,100人
Instagram:Rainych(rainych_ran) 19万2,000人
※22年2月18日現在
チャンネル登録者数203万人(2022年2月現在)を誇る、インドネシア出身の人気ユーチューバー、レイニッチさん。彼女が配信しているのは、日本のアニメソングや洗練された音楽性で1970~80年代に流行したシティーポップなどをカバーした歌唱動画。ヒジャブ(髪の毛を覆い隠すスカーフ)姿で披露する滑らかな日本語と、子猫のような愛らしい歌声が評判を呼び、日本の大手レコード会社からデビューも果たした。日本語を勉強したことも、訪日経験もないという彼女が日本語の歌に引かれる理由とは。書面で思いを語ってくれた。
――ユーチューブでカバーソングの動画の投稿を始めたきっかけは?
レイニッチ 小さな頃から歌うのが好きで、以前から趣味として自分の歌の音源を音楽プラットフォームで公開していたんです。その時に同じ趣味を持つ友人ができ、いろいろ教えてもらった流れで15年に自分のユーチューブチャンネルを開設しました。
――理系女子で、ユーチューバーになる前は工学系の専門学校で講師をしていたとか。
レイニッチ はい。大学では数理科学を勉強していました。小さい時から科学が好きで、科学者についての本を読んでは「カッコいいなぁ」と憧れていました(笑)。
――日本語を勉強したことはなく、曲は耳で聞いて覚えるそうですが、そもそもなぜ日本語の歌を?
レイニッチ 日本のアニメーションにハマっていたこともあり、自然と日本のナンバーを歌うようになりました。子どもの頃は日本の漫画に夢中になっていて、特に『名探偵コナン』をよく読んでいました。
――アニメソングから、竹内まりあなどのシティーポップ、米津玄師らの最新ヒットソングまでさまざまな日本の歌をカバーしていますが、選曲方法や基準は?
レイニッチ ほとんどの歌は自分自身で選んでいます。ユーチューブなどの作業を手伝ってくれる知人からの推薦もたまにありますが、それ以外の曲は自分が歌いたいと思ったものを自由に選んでいます。
私はもともと特定のジャンルにとらわれず、さまざまな時代の音楽を楽しんで聞いていますが、シティーポップに関しては自分のお母さんと一緒に楽しめるような音楽という点に引かれますね。
故松原みきが1979年にリリースしたシティーポップの名曲『真夜中のドア~Stay With Me』をカバー。レイニッチの甘い歌声とポップなメロディーがマッチ。原曲にも注目が集まり、配信チャートで世界的ヒットを記録(Rainych Ranのユーチューブより。以下同)
いまも故郷から動画配信
スターの自覚はありません
――現在、チャンネル登録者の主な国・地域は?
レイニッチ インドネシア、マレーシア、日本、ベトナム、タイといったアジアの他、米国在住の方も多いですね。
――母国語ではない日本の曲を、美しい発音とイントネーション、そして絶妙な息遣いで歌いこなす秘訣(ひけつ)は?
レイニッチ まずは、褒めていただきありがとうございます! 日本語はどこかで習ったことはなく独学なのですが、レコーディング前には発音練習をできる限りするようにしています。歌う時も発音には一番気を配りながらやっていますね。
――歌うのが一番難しかった曲は?
レイニッチ 発音というより、歌の技法で難しかったのが日本のロックバンド、女王蜂の『火炎』です。私自身は音楽理論に詳しくないのですが、転調が多い難曲でした。自分にとって挑戦となった曲ですが、楽しく歌えました。
――20年10月に日本のソニーミュージックからデビューを果たしましたが、オファーがあった時の心境は?
レイニッチ 控えめに言っても、とても興奮しました。歌の動画をユーチューブで公開し始めたのは、歌への情熱を世界中の皆さんと分かち合いたいというシンプルな動機だったので、デビューは思いもよらない話でした。感謝してもしきれないほどの幸運です。
――現在もリアウ州の小さな町に住み、動画も自宅で撮影しているとのことですが、レイニッチさんは地元のスーパースターのような存在なのでしょうか? また家族や友人の反応は?
レイニッチ 新型コロナウイルスの流行による行動規制が始まってからは、外出せずにほぼ家で過ごしています。なので自分が“スーパースター”と感じるようなことはなく、生活面での変化も特にないですね(笑)。
家族や友人は、私がユーチューブを始めた時から協力的で、今も変わらず応援してくれています。ほとんどの作業を自分一人でやっているのですが、活動を通じてオンライン上で知り合ったたくさんの方々が手助けしてくれることもあり、本当にありがたいです。
米国の人気女性ラッパー、ドージャ・キャットのヒットナンバー『Say So』を日本語に訳してカバー。英語歌詞の原曲を日本語で歌いたいと、日本に留学していたインドネシア人に依頼して翻訳。動画はドージャ・キャット本人の目にも留まり、再生回数が2,500万回を超えるヒットに
日本中のネコと交流が夢
歌手Reolさんにも会いたい
――まだ日本を訪れたことがないそうですが、日本のイメージは?
レイニッチ 私の中の日本のイメージは、美しい国、美しい人々…。テクノロジーが進んでいて、さまざまなエンターテインメントやおいしい食べ物も豊富な国なのだろうなぁといつも想像しています。
――訪日できたらやってみたいことは?
レイニッチ そうですね、私は“ネコの執事”を名乗るほどの大のネコ好きなので、日本中のネコちゃんたちに会って1週間分のおやつをあげたいです(笑)。
尊敬しているアーティストさんもたくさんいるので、ぜひ会ってみたいです。誰か一人挙げるなら、シンガー・ソングライターのReol(れをる)さん。私が歌い手としてのキャリアをスタートさせた時から目標にしている方の一人です。
――逆に日本人に紹介したいインドネシアの歌手は?
レイニッチ 歌謡曲の歌手なら、男性シンガー・ソングライターのイワン・ファルスとリズキ・ファビアン、女性ポップシンガーのライサとラティ・プルワシです。また、私と同郷の歌手、メラティです。
――将来の夢は?
レイニッチ いつか自分の森を作ること。私の長年の夢なんです。そして必ず達成したいのが、自分のオリジナルアルバムを出すこと。かなり前から制作を進めているのですが、近いうちに発表できると思います。楽しみにしていてください。
――ご自身の歌がユーチューブを通じて何百万もの人に届いていることをどう感じていますか?
レイニッチ 世界中の人々とつながれるのが純粋にうれしいですし、私も全てのプロセスを楽しみながらやっています。自分が楽しめることが最も大切ですからね。私の歌を愛してくれる方たちと出会えて、私は本当に幸せ者だと思います。
最近は中国語の歌にも挑戦。中国の女性歌手、阿肆(アー・スー)の難曲『105℃を愛するあなた』をカバー。「中国語の歌詞も独学。発音はまだまだ練習が必要ですが、視聴者に好評で励みになります」
(NNAのユーチューブより)
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エリカ・エビサワ・クスワンさん(インドネシア/日本)