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アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、コロナ禍の日本で暮らす外国人の声をつづった『ルポ コロナ禍の移民たち』(室橋裕和著、明石書店)。
日本 ノンフィクション
ルポ
コロナ禍の移民たち
室橋裕和著
外国人が語るコロナ禍ニッポン
新型コロナウイルス流行後、日本で暮らす外国人はどう生きているのか。そんなテーマを基にアジア人を中心とした移民の暮らしを取材。彼・彼女たちが明かした本音を通して、日本人とは異なる目線で現代社会をのぞく。
著者はアジアと旅を専門にするルポライター。タイに移住経験があり、現在の住まいはアジアタウンとして知られる東京都新宿区の新大久保。そういった経験からか、移民を見つめる視線にはフィルターが掛かっておらず、淡々としながらも温かい。
マスクを高額販売しひともうけを狙うエスニック食材店に、オンライン授業続きで友だちもできず、孤独な留学生活を続ける学生。著者は全国各地を訪ね歩き、時にお裾分けしてもらった各国の郷土料理を頬張りながら、さまざまな事情を抱える移民の声に耳を傾ける。
印象的だったのが、外国人技能実習生として来日後、行き場を失ったベトナム人の文字通り「駆け込み寺」となっている大恩寺(埼玉県本庄市)のルポ。ベトナム人住職を頼りにやってくるのは、新型コロナ禍で解雇された人や、日本人社員のパワハラや暴力に耐えきれず逃亡した人。著者は、彼らの過酷な体験談を紹介しながら、「移民=安い労働力」としか見なさない悪徳業者の実態や外国人技能実習制度のひずみを指摘する一方、「もう少し日本で稼ぎたい」という実習生のちゃっかりとした本音も伝える。
日本に約300万人いるという在留外国人。この3月から新型コロナの水際対策である入国規制が緩和され、足止めされていた技能実習生や留学生たちが日本にやってくる。「移民も日本人と同じようにこの社会で踏ん張っている」という著者のメッセージが、多くの人に届くことを願う。
『ルポ
コロナ禍の移民たち』
- 室橋裕和 著 明石書店
- 2021年12月30日発行 税込み1,760円
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