【インフルエンサーinアジア】
動画配信で中国ファン獲得
上海発の日本人美女ユニット
しゃおぱんず
SNSで多数のフォロワーを持ち、強い影響力を持つインフルエンサーが注目を集める昨今。そんな彼・彼女たちの中から、日本とアジアをつなぐインフルエンサーをご紹介。(取材=NNA東京編集部 古林由香)
左:Azu 千葉県出身。広告関連企業の駐在員として2015年に上海赴任。転職後、上海のマーケティング会社で勤務
右:Kanako 東京都出身。美容関連企業の駐在員として15年から上海在住。エステなど施術の指導に当たる
(しゃおぱんず提供)
bilibili:小胖子AzuKanako来自日本 2万3,000人
小紅書: 小胖子AzuKanako来自日本 5,265人
※21年12月21日現在
中国の動画配信プラットフォームで、“上海在住のアラサー日本人”目線で作ったコンテンツを投稿し、ファンを獲得している「しゃおぱんず」のAzuさんとKanakoさん。日系企業の駐在員として上海に赴任し、現在も会社員として多忙な日々を送っているが、「日中それぞれの魅力を自分たちの目線で両国に伝えたい」とコンテンツ作りにまい進している。中国向け配信のエピソードを中心に、体験を語ってもらった。
――2021年4月にユーチューブのほか、中国の動画配信プラットフォームにチャンネルを開設し活動をスタートさせましたが、これまでの経緯は?
Azu まずKanakoと知り合ったのは、17年の夏。上海在住の同年代の日本人が集まる会で初めて顔を合わせました。しばらくは知り合い程度の仲だったのですが、20年に新型コロナウイルス感染症が流行し、上海から離れる日本人が多くなる中、残っていた者同士として仲が深まりました。
私は以前、ユーチューブで日本人向けに中国情報を発信するチャンネルをやっていたのですが、中国向けも挑戦したくなりKanakoに相談しました。彼女はエステティシャンとして美容の知識が豊富で、日本の美容製品などを紹介するには彼女の力が必要だなと思ったんです。Kanakoも配信に興味を持っていたので快諾してくれて、2人でやっていくことになりました。
――ユニット名「しゃおぱんず」の意味は?
Azu 中国語で“小デブ”を意味する小胖子(シャオパンズ)から付けました。日本語でも言いやすい単語で、かつ2人組なので、「~ズ」と付けたくて。「小籠包ズ」とか「パンダガールズ」といった案も浮かんだ中、「しゃおぱんず」がぴんときて決めました。
Kanako 当時、2人ともリアルに小デブだったというのもあるのですが、食べることが大好きで上海や中国各地のグルメを紹介する食レポ動画も多いので、イメージ的にも合っていると思います(笑)。
――しゃおぱんずさんのコンテンツは日本向けにはユーチューブ、中国向けとしてbilibili(ビリビリ)と、小紅書(レッド)で配信していますが、中国の動画配信プラットフォームの特徴は?
Azu ビリビリは中国版ユーチューブとも呼ばれていて、比較的長尺でしっかりとした内容の動画をアップしている人が多いのが特徴。もともとアニメコンテンツが多く、日本文化に興味があるユーザーが一定数いるので、中国の代表的な動画配信プラットフォームの中でも日本人運営のチャンネルが一番受け入れられやすいと感じます。
Kanako しゃおぱんずも開始4カ月でフォロワーが1万人に達しました。ビリビリのメインユーザーはZ世代(1990年代半ばから2000年代生まれ)と言われているのですが、私たちのチャンネルは40代以降の男性のフォロワーが中心で、ちょっと珍しいようです。今後は女性層も増やしていきたいですね。
Azu レッドはインスタグラムに近い感じで、口コミツールの機能が特徴。1級都市(中国政府による都市ランキングの最上位の都市。北京、上海、広州など)在住の20代後半から30代の女性がメインユーザーということもあり、しゃおぱんずの動画も、旅行の必需品紹介や、Kanakoが実演するホームエステ、簡単ヘアスタイルのハウツーなど美容系コンテンツの人気が高い傾向にあります。
中国向けに配信を始めた経緯や、ユーザーの反応についてトーク。「サムネイル(一覧用の縮小画像)は日本、中国用それぞれ使用言語を変えていますが、動画自体は同じものを配信。ビリビリでは芸能人や日本食のネタのほか、私たちが驚いた中国や、中国の好きなところをトークする動画が人気です」とAzuさん(しゃおぱんずのユーチューブより)
弾幕で中国ユーザーと交流
辛口の感想は割り切るが吉
――中国のプラットフォームについて、ユーチューブと特に違いを感じる点は?
Kanako 中国の人口自体が多いというのもあり、プラットフォーム自体のユーザー数の規模が違い、フォロワー数も伸びやすいと感じます。ちなみにレッドだけでも3億人以上のユーザーがいると言われています。
Azu 広告収入を得にくい点も大きな違いで、配信で収入を得たい場合はPRなど企業案件を獲得する必要があります。そのため、コンテンツの内容よりも、フォロワー数をいかに伸ばして企業案件を獲得するかを重視する人が多いと感じます。特にレッドがその傾向がありますね。でも私たちはちゃんと面白いコンテンツを作り、自分たちがきちんとお薦めできるものだけを紹介しようという考えです。
Kanako そういった違いがある一方で、コンテンツへの反響や面白いと思ってくれるポイントは、日本とあまり変わらないと思います。
――中国向けに配信をする際、何か気を付けていることは?
Azu やはり日中の歴史的な部分ですね。日本人が中国の情報を現地から配信する限り、歴史への配慮は必須です。歴史的に敏感になる日の前後には、動画投稿を避けるようにしています。動画制作の際も、撮影場所や発するコメントについて、細心の注意を払うようにしています。
実は以前、配慮が足りない動画をアップしたことがあり、自分の勉強不足を痛感しました。それ以降は、配信前に知り合いの中国人にチェックしてもらうようにしています。
――やりがいや喜びを感じるのはどんな時? 逆に、辛さを感じる時は?
Azu 日本向けに関しては、日本から上海に赴任した方の多くが私たちの動画を見てくださっているようで、お会いした際に「見ました」という言葉をいただくことも。そんな時、やっていてよかったなと思います。
不安を抱えて渡航する方もいると思うのですが、そういう方の不安を少しでもなくし、むしろ上海にワクワクしてもらえるような動画を今後も配信していきたいです。
Kanako 私も似ていますが、美容法や化粧品などの紹介動画を見てくれた方から、「お薦め品を使ってみたら良かった」といった言葉を頂くとやりがいを感じます。
Azu 中国向けに関しては、中国に住みながらも現地の方との交流はあまり多くなかったので、動画のコメントや弾幕(画面上に流れる視聴者コメント)を通じてやりとりできることがうれしいです。日本語でコメントをくれる方も結構います。私たちの動画で日本にポジティブなイメージを持てたという方もいて、励みになります。
Kanako その一方、結構手厳しいコメントをいただくことも。「長年住んでいる割には中国語が下手」とストレートに言われたりもします…。
Azu 傷つくこともありますが、日本人が中国で動画配信をする上で避けられないことだと割り切っています。
Kanako その意味で、辛いなって思うのは動画の編集作業くらいかもしれません(笑)。2人で分担しているのですが、長いものだと10時間くらいかかるので。
ビリビリ内のしゃおぱんずのチャンネルで人気を博したのが、中国のイケメン芸能人についてガールズトークを繰り広げた動画。「視聴者が弾幕を使って『私は〇〇のほうが好き』といったコメントをくれて、参加型企画のようになり楽しかったです」とKanakoさん(しゃおぱんずのBilibiliより)
楽しい上海を伝えていきたい
目標は中国で有名なアノ日本人
――コンテンツ制作する際に大事にしていることは?
Azu 日本向けに関しては、私たちが楽しく生活している中国の様子を知ってもらいたいという気持ちでやっています。というのも赴任前、日本のメディアだけを見聞きしていた自分は、中国に関して偏った情報ばかり受け取っていたことに来てから気付いたんです。私たちが今のリアルな中国を発信することで、新たな一面も知ってもらえたら。
Kanako 私の上海駐在が決まった時も、自分も周りも「大変だ!」という反応だったのですが、いざ来たら私的には日本よりも住みやすい環境でした。移り変わりが早くていろんな刺激があるのも楽しいですし、そんな上海や中国の魅力が伝わればいいなという気持ちです。
Azu 中国向けにも、基本的には同じ思いです。中国でこんなに楽しそうに生活している日本人がいるんだよ、ということを知ってもらい、お互いの国を思い浮かべた時に生じるネガティブな感情を少しでも減らせたらと思っています。
――今後の目標は?
Azu 新型コロナの収束後、再び日中が自由に行き来できるようになることを見据えて、有益な旅行情報を発信するプラットフォームにしていきたいです。あと、長く上海に住んでいるからこその人とのつながりが私たちの強みなので、さまざまな分野に特化したゲストを交えてコンテンツの幅を広げていきたいです。また、1周年となる今年春くらいまでに一度オフラインイベントでもして、中国の視聴者と交流する機会を作りたいです。
Kanako ユーチューブのほうは、フォロワー1万人が目標。ビリビリのほうは…かなりいきたいですね。目指せ、山下智博さん(※)です!
※中国で有名な日本人クリエーター。ビリビリでのフォロワーは約265万人
Azu “超えろ山下さん”ということで、頑張ります(笑)。
Azuさんのお気に入り作は、上海の若者に人気のナイトスポット「FOUND158」の紹介動画。「遊びにきている若者を捕まえて、つたない中国語でインタビューするなど頑張りました(笑)。上海の今の様子を伝えられたのではと思っています」(しゃおぱんずのユーチューブより)
(NNAのユーチューブより)
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エリカ・エビサワ・クスワンさん(インドネシア/日本)