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アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、世界的規模で旋風を巻き起こしている韓国の人気グループ、BTSのコンサート演出家が公演の知られざる裏側をつづった『K−POP時代を航海するコンサート演出記』(キム・サンウク著、キム・ユンジュ絵、岡崎暢子訳、小学館)。
韓国 芸能ビジネス ノンフィクション
K−POP時代を航海する
コンサート演出記
キム・サンウク著、キム・ユンジュ絵、
岡崎暢子訳
BTSと世界へ、音楽市場を変えた演出家の7年の記録
世界的人気を博す韓国出身のボーイズグループ、BTS。2020年の米ビルボード1位獲得時だけでも、その経済効果は実に約1兆7,000億ウォン(約1,520億円)という規模。そんな彼らが新人ほやほやだった頃から新型コロナウイルス流行前の世界ツアーまで、7年に渡りコンサート演出を担当した韓国人男性が公演の裏側をつづったノンフィクションを出版した。
テレビ局への就職活動に失敗し、アルバイトをしていた公演制作会社に誘われるがまま入社したという著者が、縁あってBTSのデビューお披露目公演を担当することになったのが2013年。
この頃アジア全域ではすでにK-POPブームが起きていて、日本でもBIGBANGや少女時代がテレビをにぎわせていた時期。しかし、当時まだ小さかった事務所からデビューしたBTSは裸一貫からのスタートで、お披露目公演も250席の小さな会場だったという。
しかしその後はブレークとともに、公演規模も大ホール、ドーム、スタジアムと年々スケールアップ。アジア、北米、欧米を行き来する超過密スケジュール、各国の会場条件に合わせ複雑になる演出プラン、時差ボケをこらえながらの海外チームとの会議、膨大な予算管理と、いくつもの難題が筆者に降りかかる。
筆者はそんな日々を「険しい上り坂」「地獄」と表するが、七転八倒しながらもBTSを最高に輝かせる演出プランを追求するのは、何よりもコンサートを愛しているから。本書の終盤、200万人超を動員した18~19年のワールドツアーのくだりは、BTSと共に世界の頂点を目指すさまがドラマチックに描かれ、ファンならずとも感動を覚える。
BTSのコンサートは、映像効果やセットを用いて楽曲の世界観を最大限に引き出すステージで知られるが、そこにはBTSの楽曲名ではないが“血、汗、涙”の努力があったからだと本書を読み納得。日本や米国など最先端の映像技術を持つチームを柔軟に取り込んで、韓国のコンサート市場全体をレベルアップしていく逸話などは、ビジネスパーソンの視点で読んでも楽しめるはずだ。
約400ページにわたる分厚い本書は、コンサート機材や業界用語などイラストを用いた専門知識の解説も充実。K-POPのグローバル化の裏側はもちろん、公演や公演ビジネスに興味がある方にもおすすめだ。
『K−POP時代を航海するコンサート演出記』
- キム・サンウク 著、キム・ユンジュ 絵、岡崎暢子 訳 小学館
- 2021年11月21日発行 税込み2,200円
その他のBOOK LIST
※書籍の紹介文は各出版社の宣伝文から引用(原文ママ)。記載の発行日、発売日、価格(消費税込み)は紙版の情報
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