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ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、『中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて』(岩間一弘著、慶応義塾大学出版会)。
中国 歴史 グルメ
中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて
岩間一弘著
世界史と中国料理のおいしい関係性をひもとく
「中国料理はなぜ世界中に広まったのか?」という素朴な疑問にとことん向き合い、世界史を絡めて解説したグルメな学術書だ。
著者は慶応義塾大学文学部の教授で、東アジア近現代史の他、食の文化交流史、中国都市史を専門とする岩間一弘氏。前作にあたる『中国料理と近現代日本 食と嗜好の文化交流史』では、日本における中国料理の進化の歴史を解き明かしたが、本書では範囲を世界に拡大。中国料理の発展の解説から始まり、アジア、欧州、米国に進出した中国料理がいかに各地で大衆化されていったのかを、索引を含めて約630ページにわたって紹介した。
特に心が躍ったのが「アジアのナショナリズムと中国料理」と題されたパート。華人が東南アジア各地に移住し街を形成していく中で、中国料理が現地の国民食として発展していく過程をシンガポールの「海南チキンライス」、マレーシアの豚肉スープ「肉骨茶(バクテー)」、フィリピンの春巻き「ルンピア」といった実例をたっぷりと取り上げながらつづる。
タイの焼きそば「パッタイ」は、1930年代にタイ政府が主導して中国料理を改良し、発案した比較的新しい料理だそうだが、その背景には同時期に起こったナショナリズム(国家主義)の高揚と、反華人感情の高まりがあったという時代背景も丁寧に記されており、近現代史の書としても楽しめる。
まさに食に歴史あり。本書を一読すれば、中国料理の味わいが何倍にも豊かに感じられるはずだ。
『中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて』
- 岩間一弘 著 慶応義塾大学出版会
- 2021年9月20日発行 税込み2,750円
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