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アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、『希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉』(中村哲著、西日本新聞社)。
アフガニスタン 国際支援
希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉
中村 哲著
今読みたい、アフガンからの中村医師のメッセージ
飛び立とうとする米軍機の機体にしがみつく人々に、「助けて、タリバンがもうすぐ来る」と外国人兵士に命乞いをする少女――。
親米民主政権が事実上崩壊し、イスラム主義組織タリバンの支配下におかれたアフガニスタン。ショッキングなニュース映像を連日目にし、気持ちが沈んでいたある日。立ち寄った書店で、故中村哲医師の顔写真をどんとあしらった本が目に飛び込んできた。
1984年、日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)から派遣された医師としてパキスタンの病院に赴任し、ハンセン病患者の治療にあたった中村医師。その過程で隣国アフガニスタンの惨状を知り、89年から医療支援をアフガニスタンに拡大。2000年に同国で起こった大干ばつにより感染症がまん延し、大地が砂漠化したことで、灌漑(かんがい)事業に着手した。白衣を脱いだ中村医師は「百の診療所より一本の用水路」を合言葉に、井戸や用水路を国内各地に建設。アフガンの人々の幸せを願い人道支援にまい進するさなか、一昨年12月に凶弾に倒れたのは記憶に新しいところだろう。
本書は09年から10年間にわたり、中村医師が西日本新聞に寄稿していた連載をまとめたもの。人間と自然の共生の在り方から経済至上主義へのアンチテーゼまで、時に命の危険を感じながらもアフガンの人々と共に荒野で汗を流した中村医師だからこそ見えた“真理”が、天啓のごとくつづられている。
米軍主導の連合軍がタリバンを制圧するために01年に始まった、アフガニスタン紛争についての言及も多数。西側の視点でしか論じられない世評に憤り、反政府側の兵士となり戦うことを選ばざるを得なかった人々の不条理さを嘆いた。
「かつて一世を風靡(ふうび)した『アフガン復興』は混乱と退廃、国土の荒廃と敵対関係という惨憺(さんたん)たる結果を残したまま忘れられようとしている」と訴え、誤りと向き合って教訓にする勇気を私たちは欠いてはいないだろうかと記している。母国から逃げ出そうとしているアフガンの人々をもし目にしていたら、中村医師は一体どんなことを語っていただろうか。
『希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉』
- 中村哲 著 西日本新聞社
- 2020年12月17日発行 税込み1,650円
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※書籍の紹介文は各出版社の宣伝文から引用(原文ママ)。価格は全て消費税込み
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