NNAカンパサール

アジア経済を視る August, 2021, No.79

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─五輪編─

異例の新型コロナ下の五輪が間近に迫り、マスク姿で東京入りする各国の代表チームの選手たち。写真は中国の卓球代表チーム=7月17日、成田空港(新華社)

異例の新型コロナ下の五輪が間近に迫り、マスク姿で東京入りする各国の代表チームの選手たち。写真は中国の卓球代表チーム=7月17日、成田空港(新華社)

ベトナム

「いよいよ」と言っていいものなのか――。23日に開会式を迎える東京五輪。ベトナムからは前回のリオデジャネイロ五輪で同国史上初の金メダルを獲得した男子射撃のホアン・スアン・ビンさんなど18選手が出場するが、新型コロナ第4波が猛威を振るう現状では、ほとんど話題に上ることもない。すでにソフトボールやサッカーなど一部の競技は始まっているが、日本から聞こえてくる五輪関連のニュースもネガティブな内容が多い印象だ。

それでも社会隔離で家に長く閉じこもる生活において、スポーツ観戦は気分転換やストレス発散に最適だろう。各競技のスケジュールを眺めながら、「誰がメダルを取るだろうか」と思案する時間も楽しいものだ。 開催には賛否両論が渦巻いているが、異国の地で日本人選手の活躍を心待ちにする人もいる。社会隔離でうっ屈している今だからこそ、ステイホームで観戦に興じたい。(濱)


中国

細々した仕事を片付けていたら、随分と遅い時間になっていた先週金曜日。休憩がてらテレビを付けると、五輪の開会式でIOCの会長が冗長なスピーチをしている。聖火が点火された時は、日本より西に位置する現在の赴任地もすっかり夜が深まっていた。

「子どもの時見た(64年の)東京五輪の開会式が忘れられない」。両親は以前そう言っていたが、今回の開会式の時間では小さな子どもは起きているのも一苦労だ。商業主義に走ったIOCにとって大事なのは米テレビ局NBCが支払う多額の放映権料で、米国人が少しでも見やすい時間に合わせる必要があったのだろう。

NBCは22年の北京五輪の放映権も獲得済み。五輪は来年も開催地から遠く離れた大国のテレビ局に気を使うのだろうか。うららかな秋晴れの中の開会式。この目で見たこともない64年の五輪に思いをはせてしまう。(陳)


韓国

せっかく日本の大学への留学が決まったものの、渡航できずに1年以上オンライン学習を余儀なくされている韓国人学生が少なくない。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための水際対策で、日本の学生ビザを取得できないのがその理由だ。

彼らの多くは大学卒業後も、日本での就職を希望している。渡航時期が遅れれば遅れるほど就職戦線では不利な立場に置かれるため、焦りを募らせているようだ。コロナ禍の中で開催が決まった東京五輪に出場するために、外国人選手が続々と来日しているというニュースを複雑な思いで聞いているに違いない。

日本政府は、日本の大学の国際化推進と、少子高齢化による人材不足の解決に向け、2008年から留学生を30万人受け入れる計画を始めた。ならば渡航できない留学生に対しても、もう少し細かな配慮があっていいのではないか。(碩)


香港

東京五輪が始まった。東京の新型コロナウイルス感染者数の多さを懸念する香港人の友人からは、日本は本当に今年、五輪をやるのかと聞かれ続けてこの日を迎えた。世界的コロナ禍での五輪に国際社会が注目していることを裏付けるように、中国や欧米に住む友人から久しぶりに連絡が来たりもした。

ただ、開会式以降はすっかり五輪ムードに一変。特に、アニメやゲーム好きの友人らは開会式の演出にいたく感動したようで、直前までの懸念はどこかへ吹き飛んでしまったようだ。SNS上には自国選手を熱烈に応援する声や、自宅で家族で観戦パーティーを開く様子などがアップされ始めた。

テレビで選手の活躍を目にするたびに沸き起こる高揚感。アスリートが真正面から競い合うこの場に、経済効果など関係ないと感じさせられる。これが五輪効果か。(保)


日本

福岡市内の弁当店で、東京五輪に向けた「各国代表の弁当」というメニューを見つけた。日本代表はおかずも入った日の丸弁当。ほかロコモコが米代表、トルコライスもトルコ代表としてシリーズに加わる。

ただ、ラインアップはこの3カ国だけ。五輪の獲得メダル数で上位のロシアや中国の弁当はない。欧州各国にしても、いくらでも料理が思いつきそうなものだが。中途半端なキャンペーンは逆にもの悲しい。よく考えれば米代表がハワイ料理というのも微妙だし、トルコライスは長崎が発祥といわれている。

約1カ月後に迫る東京五輪だが、少なくともここ福岡では開催への盛り上がりは感じられない。本紙読者の多くも「五輪もいいけれど、われわれの渡航制限をなんとかしてくれ」というのが本音ではないだろうか。中途半端は結局、期待通りの効果を上げることができないのではと危惧する。(翠)


インドネシア

東京五輪の開会式が無観客で行われた。新型コロナ以外の要因もあり、「オリンピック楽しみ」の一言すら政治的な発言と捉えられかねない雰囲気だ。こんな五輪は今回限りで、3年後のパリ開催時にはコロナ禍からとっくに脱却していると願いたい。

インドネシアでは、ヒンズー正月(ニュピ)やイスラム教の断食明け大祭(レバラン)などの行事を今年もコロナ下で迎えた。昨年は「こんな特殊な環境での実施は一度限り」と思っていたが見通しが甘かった。先日の犠牲祭は昨年より行動制限が厳しく、近所では感染者が出たために食肉処理は中止となった。

インドネシア政府は15年後のオリンピック誘致を目指している。2036年といえば計画上では首都移転を進めている真っ最中。さまざまな課題はあろうが、多くの人が素直に「オリンピック楽しみ」と言える未来になってほしい。(幸)

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