NNAカンパサール

アジア経済を視る August, 2021, No.79

ビジネス書から語学本まで

アジア本NOW

ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介するコーナー。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、『コンビニからアジアを覗く』(佐藤寛、アジアコンビニ研究会編、日本評論社)。


アジア 経済

コンビニからアジアを覗く

佐藤寛、アジアコンビニ研究会 編

コンビニからアジアを覗く

アジアのコンビニ事情を専門家が徹底解説

1970年代にアメリカから日本にやってきたコンビニエンスストア。その後、独自の進化を遂げた日本型コンビニは、新たなビジネスモデルを引っ提げてアジア各地に進出。現地の文化を柔軟に取り入れながらさらなる変身を遂げ、人々の暮らしに欠かせない存在となった。

そんなアジア各地のコンビニ事情について、日系コンビニ各社の展開を中心に経済学と社会学の視点で解説したのが本書。編者は日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の佐藤寛氏と、同研究所のメンバーらで構成されるアジアコンビニ研究会。20人から成る執筆陣も、マーケティングや流通、文化人類学などの研究者とあり、内容はかなり専門的。アジアのコンビニを網羅的に扱ったおそらく初の書籍で、読み応えは十分だ。

登場するのは、日本、韓国、タイ、台湾、中国、フィリピン、マレーシア、インドネシア、カンボジア、ベトナム、インドの11カ国・地域。資料に基づく分析だけではなく、中国の若者世代を対象にした日系コンビニに関する意識調査、おにぎりといった日本型コンビニの定番商品のローカル化戦略など、読み物としても楽しめる現地発のリポートも充実している。ちなみに、ベトナムのファミリーマートで売り出したおでんは、辛みと酸味の効いたトムヤムスープがベース。現地の嗜好に合わせたアレンジが功を奏し、大人気だとか。

日本型コンビニの基準は、良質な店員の接客態度、商品の品質の高さ、店舗の清潔さを意味するSQC(Service, Quality, Cleanliness)だとされていると佐藤氏。コロナ禍の中、身近にある日本型コンビニが「開いててよかった」とアジア各地で重宝されている光景が目に浮かんだ。

『コンビニからアジアを覗く』

  • 佐藤寛、アジアコンビニ研究会 編 日本評論社
  • 2021年6月30日発行 税込み2,640円

その他のBOOK LIST

※書籍の紹介文は各出版社の宣伝文から引用(原文ママ)。価格は全て消費税込み


アジア 国際協力

『日本の国際協力 アジア編
経済成長から「持続可能な社会」の実現へ』

重田康博、太田和宏、福島浩治、藤田和子 編著 ミネルヴァ書房
2021年6月30日発行 4,180円
日本は、アジアの発展にいかに取り組んできたか。21世紀の日本の国際協力の課題を考えるための基礎的判断材料と論点を提供する。

東アジア 歴史

『東南アジア史10講』
(岩波新書)

古田元夫 著 岩波書店
2021年6月18日発行 990円
ASEANによる統合の深化、民主化の進展と葛藤。日本とも関わりの深いこの地域は、歴史的にさまざまな試練を経ながらも、近年ますます存在感を高めている。最新の研究成果にもとづき、世界史との連関もふまえつつ、多様な民族・文化が往来し東西世界の要となってきた東南アジアの通史を学ぶ。「歴史10講」シリーズ第五弾。

中国 自動車

『中国のCASE革命
2035年のモビリティ未来図』

湯進 著 日経BP
2021年6月21日発売 2,200円
本書は中国版のCASEやMaaSを軸とし、5Gとニューインフラ、スマートファクトリーとAIの推進など、様々な角度から中国のモビリティー革命を描き、日系企業の対応を議論します。

中国 台湾 政治社会学

『中国ファクターの政治社会学
台湾への影響力の浸透』

川上桃子 編・監訳、呉介民 編、津村あおい 訳 白水社
2021年6月16日発行 2,640円
本書では、台湾の日常生活のいたるところに現れていながら、その実態が捉えがたい中国の影響力を「チャイナ・ファクター」として析出、社会科学の視点で事態を初めて理解する試みである。

タイ 近現代史

『タイの近代化
その成果と問題点』

阿曽村邦昭 編著 文眞堂
2021年3月1日発行 3,850円
タイが揺らいでいる。若者中心の反政府デモが続き、軍事政権的な色合いの濃い現政権の首相辞任の要求や、長い間タブーとされてきた王室批判も起きている。タイの近代化の歴史と現在の問題点を、日本や近隣諸国との比較も織り交ぜ、この地域での経験豊富な元外交官、実務家、研究者が明らかにする。現在のタイを学ぶ上での必読書。

ミャンマー 政治

『ミャンマー政変
──クーデターの深層を探る』(ちくま新書)

北川成史 著 筑摩書房
2021年7月6日発行 924円
ミャンマー国軍は、なぜクーデターを起こしたのか。現地取材をもとに、国軍、民主派NLD、少数民族の因縁を紐解く。

中国 SF小説

『三体Ⅲ
死神永生 上・下』

劉慈欣 著 大森望、ワン・チャイ、光吉さくら、泊功 訳 早川書房
2021年5月25日発行 各2,090円
三体文明の地球侵略に対抗する「面壁計画」の裏で、若き女性エンジニア程心(チェン・シン)が発案した極秘の「階梯計画」が進行していた。目的は三体艦隊に人類のスパイを送り込むこと。程心の決断が人類の命運を揺るがす。シリーズ34万部以上を売り上げた衝撃の三部作完結!

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